12日、今年も中京競馬場で開催されたセントウルS(G2)は、C.ルメール騎手の騎乗したレシステンシアが、2番手から抜け出して快勝。ゴール前でクビ差まで詰め寄った2番人気ピクシーナイトの猛追を凌ぎ、大一番となるスプリンターズS(G1)に向けて好発進を決めた。
3着にも“幻の高松宮記念馬” といわれた4番人気クリノガウディーが入り、1~2番人気馬のワンツーフィニッシュ。払戻も馬連が590円、3連複でも1790円という平穏な決着だった。
そんな中、6番人気の伏兵ながら見せ場十分の激走を演じたのが、浜中俊騎手とのコンビで4着に入ったジャンダルム(牡6歳、栗東・池江泰寿厩舎)だ。
「今日もスタートでした。五分のスタートなら勝っていたと思う。G1を勝てる馬です」
レース後に、悔しさを滲ませるコメントを残したのは浜中騎手。一見、順当な決着にも見えたレースで、G2どころかG1を勝てるという言葉には、相当な手応えを掴んだのだろう。
開幕週の中京で行われた芝1200mのレース。逃げたシャンデリアムーンが、前半32秒9のハイペースで飛ばしたとはいえ、土曜も逃げ先行馬が健闘していたように馬場状態は良好。上位3着以内に入った馬が揃って好位からの競馬に対し、ジャンダルムはスタートでの出遅れも響いた。
最後方からの競馬を強いられたこともあり、最後の直線でもまだ後ろから3~4頭目と厳しい位置だったジャンダルム。短くはない中京コースの直線でも前を行く馬との距離にはかなりの開きがあった。
しかし、外に持ち出されて繰り出された末脚は、上がり3ハロン32秒6と目の覚めるような切れ味。これは勿論、メンバー中最速の数字である。
「ジャンダルムはゲート決まればG1でも穴っぽい」
浜中騎手と同じくG1級の評価をしたのは、元JRA騎手の安藤勝己氏。自身の公式Twitterにて3着以内に入った馬の力を認めた一方で、ジャンダルムの走りは安藤氏の目にもしっかりと焼き付いたのだろう。
前走の北九州記念(G3)は、1番人気に支持されながらも出遅れが響いての7着に敗れた。このとき手綱を取った福永祐一騎手も「勝つ可能性があった。今日はスタートに尽きる」と悔やんでいる。持っている力を発揮出来れば、いつ勝ち負けしてもおかしくないことを、ジャンダルムはセントウルSでも証明した。
「前半は流れましたが、快速馬の揃うスプリント重賞ともなると、そう珍しいことでもないです。実力馬が3着以内を独占したとはいえ、3頭とも好位から伸びたように完璧なレース運びでした。そういう意味では、完璧すぎたためにスプリンターズSへこれ以上の上積みがあるかとなると微妙なところでしょう。
昨年出走して5着だったクリノガウディーはともかく、レシステンシアもピクシーナイトも中山コースは初コースです。対するジャンダルムは、出遅れが響いてスムーズな競馬ができなかったにもかかわらず、3着クリノガウディーとはわずかハナ差。中山経験もあり、出遅れさえなければ、勝ち負けしても不思議ではありません」(競馬記者)
2歳時には2000mのG1・ホープフルS(G1)で2着にも入ったジャンダルム。母にスプリントG1馬のビリーヴがいるように、血統的にはスプリンターだが、“走り過ぎた”ことで当時の主戦だった武豊騎手も「距離は持つ」とコメントしたほど。
また、ジャンダルムを管理する池江泰寿調教師も、三冠馬オルフェーヴルを育てた名伯楽だが、2019年の大阪杯(G1)をアルアインで制して以来、G1で31連敗中と縁がない。
もしかしたらG1連敗ストップの救世主は、6歳にしてようやく本領発揮の場を手に入れた遅咲きのスプリンターなのかもしれない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。