「幼い頃から夢見ていたブリーダーズCという舞台に、僕を選んでくれたことを本当に嬉しく思いました」
G1・2勝馬ラヴズオンリーユーとの米ブリーダーズC挑戦が決まり、本馬が所属するDMMバヌーシーの公式チャンネルで心境を語っている川田将雅騎手。
新型コロナウイルスの感染拡大防止によって、帰国後は14日間の自主隔離を余儀なくされる可能性が高い。その場合エリザベス女王杯、マイルCSといったG1レースに騎乗できないが、それでも本人は「多くの方にご迷惑をお掛けするので、それを押してでも是非とも行かしてほしい」と、米国競馬の祭典へ強い意欲を示している。
あまり海外遠征のイメージがない川田騎手だが、実は近5年でJRAが海外馬券を発売した主要レースなら、日本人騎手で武豊騎手に次ぐ7回の騎乗を記録。比較的遠征が容易な香港だけでなく、2度の凱旋門賞(仏G1)挑戦や、オーストラリアのメルボルンC(G1)に騎乗するなど、積極的な挑戦を続けている。
その根本にあるのが、父・川田孝好調教師(佐賀)と映像を見るなどして、幼少期から育んだ海外のビッグレースに対する憧れだ。自主隔離のリスクを踏まえて挑む今回の米国遠征だけを見ても、川田騎手の強い気持ちが見て取れる。
しかし、その一方で、積極的な思いとは裏腹にこれまでの川田騎手の海外挑戦は「屈辱の歴史」と述べざるを得ない。
先述した通り、日本人騎手による近5年の主要G1では、武豊騎手に次ぐ7度の騎乗機会がある川田騎手。いずれも日本馬とのコンビだが、すべて馬券圏外に敗れているどころか、最高着順がフォワ賞(G2)に挑んだサトノノブレスの6着という苦戦ぶりだ。7年前の2014年にはハープスターとのコンビで凱旋門賞に臨んだものの、やはり6着に敗れている。
「川田騎手はコロナ禍で難しい状況にある中でも、積極的に海外遠征を行っている騎手の1人と言えるでしょう。
2016年に日本ダービー(G1)をマカヒキとのコンビで制して、ダービージョッキーになった川田騎手ですが、その次走に欧州へ挑戦した際は、海外での経験不足を理由に乗り替わりを余儀なくされました。川田騎手が海外へ強いこだわりを見せ始めたのは、この一件が発端かもしれません。
また、その翌年にはサトノノブレスとのコンビで凱旋門賞に挑戦しましたが、あくまで同時に遠征していたサトノダイヤモンドの“ラビット役”という位置づけ。ラビットにトップジョッキーがわざわざフランスまで遠征して騎乗することが話題になりましたが、ここでも川田騎手の海外への気持ちが表れていました。
しかし、前哨戦のフォワ賞では満足なラビット役ができず、レース後、サトノダイヤモンドに騎乗していたC.ルメール騎手から叱責を受けるシーンもあったとか……。日本では今や日本人No.1と言われる川田騎手ですが、強い思いを持って挑戦している海外遠征では苦い結果が続いている状況です」(競馬記者)
また、昨年には川田騎手が主戦を務めるダノンスマッシュが香港スプリント(G1)に遠征するも、川田騎手は国内の騎乗を選択した。
それまでG1で2度の1番人気がありながらも2着が最高だったダノンスマッシュだったが、R.ムーア騎手とのコンビで初G1制覇。その後、川田騎手も今春の高松宮記念(G1)を制して留飲を下げた格好だが、やはり海外のビッグタイトルには縁がない状況が続いている。
「今回、ブリーダーズCへ挑戦という形にはなりますけど、こちらの認識としては『勝ちに行くためにブリーダーズCへ』というところ。結果を出すために行きます」
BCフィリー&メアターフ、もしくはBCターフが予定されているラヴズオンリーユーの他にも、BCマイルに挑戦予定のグレナディアガーズ、BCディスタフ(いずれも米G1)に挑むマルシュロレーヌなど、川田騎手にとって大きなチャンスが待っていそうな今年のブリーダーズC。
果たして川田騎手は、今度こそ結果を残して「世界のKAWADA」になれるのだろうか。そして、その時には日本人騎手初のブリーダーズC制覇という偉業もついてくる。今年だけで高松宮記念、大阪杯、安田記念とG1・3勝を挙げているだけに、前人未到の扉を開くだけの実力は十分あるはずだ。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。