以前、パイオニアの2-1号機『ムサシ』を取り上げた際、「盤面押し攻略法」というゴト紛いの荒技を紹介した。
パネルを「ぎゅーっ」と押して窓枠内部をリールユニットに接触させ、無理矢理777を揃えると、なぜか通常通りにビッグがスタートする…というものだ。
詳しくは『ムサシ』の回を再読願いたいが、実は『ムサシ』以外にもその後、いくつかのマシンに同様の打法というかゴト行為が通用した。その一例が、1992年春にエーアイからリリースされた3-1号機『ハンター』である。
件のネタについてはのちほど触れるとして、まずは機種の概要から。
その名のとおり本作は、アフリカ大陸を舞台とするハンティングがモチーフとなっており、絵柄にはライオンやゾウ、ワシや弾丸を採用。前身の2-1号機『サファリラリー』と同様、同社ならではのこだわりを感じさせる。
基本仕様は、BR両ボーナスにシングルボーナスとその集中役を搭載する、いわゆるA‐Cタイプ。
スペックは集中役を出玉獲得の主軸に置いた設計で、BR両ボーナスの確率はそれぞれ431分の1(設定1)から341分の1(設定6)と全設定で低め。
一方、主役であるところの集中役「ハンターチャンス」は、当選確率が2041~372分の1と設定の高低に応じて激変するのだが、パンク確率にも設定間格差があり、こちらは低設定ほど低め…すなわち長打が期待できる設計となっているのが特徴だ。
以上、スペックに関しては、あくまで保通協の型式試験にパスした段階で、つまりは「ノーマル機の場合」に限っての話である。
1992年といえば、これまでに何度も述べてきたとおり、市場に蔓延する裏モノ連チャン機を排除する目的で基板改修・再封印作業が挙行されたものの、結局のところ作業が一段落するタイミングで新たな裏モノが続々と登場してきた。
この『ハンター』も、そんな新勢力のひとつ。そもそも、前身の『サファリラリー』には、裏モノ化によって不人気台から一気にスターダムへと成り上がったという、華麗なる遍歴がある。その流れをくむ『ハンター』に対して、「期待するな」というのも無理な話だ。
連チャンの特徴は、「BR両ボーナスに集中役が絡む」という、まさしく『サファリラリー』や、遠い祖先にあたる伝説のマシン『アニマル』を彷彿させるものだった。
連チャンシステムは、オーソドックスな上乗せ方式をベースに、天井方式をプラス。
まず、所定の確率で連チャンモードに当選すると、次回ボーナス発生までのゲーム数を連チャンカウンタにセット。カウンタの数値が0になると天井、すなわち連チャンが発生する仕組みだ。
連チャンカウンタの上限値が「50」なので、ずばり50ゲームまでが連チャンゾーンとなる。
この通称「50ゲーム連チャンVer.」は、都内や首都圏を中心に広く各地に蔓延。「猛獣系」に目がないファンを興奮させた。
さて、例の「盤面押し」についてだが、『ハンター』の前面パネルは、『ムサシ』よりもかなり硬く、渾身の力を込めて押し込んでも、ヘタすりゃ割って大事になりそうなレベルだった。
では、「ヤツら」はどうやって、「盤面押し」をやっていたのか。話は簡単。リールを強制的に止めることができれば、なにもパネルを力一杯押し込む必要はない。つまり、別の方法を使えばいいのだ。
こんなエピソードがある。
「○○駅前の店が○○人グループに荒らされたらしい」
そんな話を小耳にはさみ、気になった自分は現場へと様子を見に行った。すでに連中の姿はなく、人気の失せたシマには「変則打ちや道具を使っての遊技は禁止!!」の貼り紙だけがエアコンの風にあおられ、虚しく舞っていた。
「せっかく来たから、ちょいと打っていこうかな」
そんな風に思い、『ハンター』の1台に腰を下ろすと、「小さな異変」に気がついた。コイン投入口の上、リール窓枠の右斜め下辺りに、キリのようなもので空けられたと思われる2mmほどの穴が空いていたのである。
「なるほど。針金を入れて、引っかけて止めていたのか…」
結局、その日は、最初の千円だけ打って、その場を後にした。いまから29年前の、ちょうどいま頃の季節のお話。
(文=アニマルかつみ)