先週末、札幌競馬場で開催された夏のスプリント重賞・キーンランドC(G3)。武豊騎手と3歳牝馬メイケイエールの参戦もあり、大きな盛り上がりを見せた。
単勝オッズ一桁台の馬が4頭の混戦を制したのはレイハリア。今夏の重賞では3歳牝馬が大暴れ。アイビスサマーダッシュ(G3)オールアットワンス、札幌記念(G2)ソダシ、北九州記念(G3)ヨカヨカに続いて古馬相手に早くも4勝目。1番人気の支持を受けたメイケイエールが敗れても、層の厚さが際立つ結果となった。
若い力が台頭する中、さすがG1馬と唸らせられる走りを披露したのは、9番人気で3着に好走したセイウンコウセイ(牡8、美浦・上原博之厩舎)だ。2着にも7番人気の伏兵エイティーンガールが入った3連単は大波乱。3番人気→7番人気→9番人気の払戻は26万7390円と高配当だった。
4歳春に高松宮記念(G1)を制したセイウンコウセイもはや8歳である。年齢的なものもあるのか、馬券圏内に入ったのは2019年6月のCBC賞(G3)で3着に入ったのが最後。近走でも善戦は見せていたものの、近々引退して種牡馬入りという噂も出始めていた。
G1馬とはいえ、馬券にならなかった期間は2年2カ月。58キロを背負った老兵の奮闘に驚きの声も続々。馬連は的中出来たが、セイウンコウセイの3着は買えなかったというファンも多かった。
その一方、愛馬の激走を見守っていたのが、セイウンコウセイを所有する西山茂行オーナー。ニシノフラワー、セイウンスカイらの活躍でも知られる競馬界の“名物オーナー”は「勝算あり」の手応えを感じていたようだ。
「3着は嬉しいのか?悔しいのか?」
自身のTwitterで“複雑な想い”を告白したのも、6年に渡って西山牧場の主軸を任された功労馬に、「まだまだやれる」という期待を持っていたからに他ならないだろう。
暑さに弱いと陣営も認めるセイウンコウセイだが、8月の北海道は雨が多く、例年より涼しかったため、元気いっぱいだったとは『日刊スポーツ』コラム内でのコメント。レース前には好調な追い切りを見たファンから現地観戦を勧められ、これを目にした西山オーナーがコメントを返すというやりとりも……。重鎮ながら気さくに交流する人柄も、同オーナーがファンから支持される理由なのかもしれない。
そしてもうひとつ、この激走に大きな貢献をした勝浦正樹騎手にも触れなくてはならない。西山オーナーと勝浦騎手は相思相愛の名コンビ。今回、セイウンコウセイに初騎乗だったことは少々意外だが、51キロの3歳牝馬相手に7キロも重い58キロで0秒1差の接戦へと持ち込む好騎乗だった。
「着差が着差ですから悔しい思いもあります」
一見、人気薄の好走にも思えるこの結果も、もう少しうまく乗れていれば、1着も狙える状態と感じていた勝浦騎手の気持ちが伝わる。西山オーナーはブログ内で、「ここでわしが勝浦の乗り方について書くと、またそこだけ拡散されるので、触れない」と多くは語らなかったものの、オーナーなりの叱咤激励というところか。
過去には、勝浦騎手が主戦を任されていたニシノデイジーの降板で話題騒然となったこともある。同馬は2歳重賞で好結果を残し、翌年のクラシック候補といわれた期待馬。春二冠で振るわなかったこともあり、秋のセントライト記念(G2)5着を機に菊花賞(G1)はC.ルメール騎手へと乗り替わりが発表された。
この “泣いて馬謖を斬る”という一件もあったものの、その後の“両者の絆”に変わりはない。ときには“愛のムチ”も見せるオーナーからの期待に応え、結果を出した勝浦騎手もまた見事といえる。
健在ぶりを見せつけたとはいえ、来年からセイウンコウセイの種牡馬入りは既定路線で、年内あと1~2戦を予定しているとのこと。
ラストシーズンに有終の美を飾るに相応しい舞台は、やはりスプリンターズS(G1)だろうか。セイウンコウセイ×勝浦騎手のコンビが、秋の中山競馬場で再び見られることに期待したい。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。