もうかれこれ30年も昔の話だが。スロ歴の長い方は、こんな噂を耳にしたことはないだろうか。
「タイヨーの右レバーの台は、熱くてヤケドする」
まぁ、人の噂というのは背びれ尾ひれが付いて大げさになりがちだが、確かに「ミラクルユーフォー」や「リスキーダック」といった当時のタイヨーのマシンは、熱かった。
LED照明など夢のまた夢だった当時、パチスロ台のパネル各部の照明は文字通り熱を発することで光を放つ白熱豆球だった。それは、どのメーカーのマシンでも同じこと。
ところが、タイヨーのマシンはなぜか他社より電球のパワーが強いのか、それともパネルの熱伝導力にすぐれていたのか、何気なくパネルに手が触れると「アツっ!!」となることがしばしばだった。
さて、そんな旧態依然とした右レバー筺体を脱ぎ捨て、業界初・オールボタン式操作部を備えた新筺体で鮮烈なデビューを果たした同社の3-2号機『トライアンフ』。このマシンもまた、別の意味でヤケドするほどにアツかった。
…そう。デビュー早々からノーマルでは起こりえない、非常に激しい挙動を示したのである。
不調期は単発ボーナスを重ねながらもひたすら吸い込み、一転して好調期に入ればビッグばかりが怒濤の勢いで連チャンし、一撃数千枚の出玉を吐き出す──。
そんな、明暗くっきりなゲーム性に、当初から貯金方式の採用が疑われた。
いったい、どんな手を尽くしたのだろう。いまとなっては不明だが、当時のパチスロ必勝ガイド編集部は早々に実機(あるいは裏ROM)を入手し、裏プログラムの解析に着手。すると、驚愕の事実が明らかになったのである。
想像どおり、裏プログラムのベースとなっているのは、貯金方式だった。しかし、「ワイルドキャッツ」や「セブンボンバー」の頃のように単純なものではなく、手法としては「アポロン」や「デートライン銀河Ⅱ」をミックスして、さらに多機能にしたものだったのである。
貯金や連チャンにかかわる裏設定の概要は以下のとおり。
①貯金確率
成立したボーナスのうち、どれくらいの割合で貯金するかを決定するモード。最低は0%すなわち貯金せず、最高は71%で貯金。設定0から9まで10段階。
②貯金目標数
放出を開始する貯金数を決定するモード。これも全部で10段階あり、最低は2個、最大は7個で天井イコール貯金放出となる。
③放出確率
放出時に抽選されるビッグ確率、すなわち連チャンのスピードを決定するモード。9段階ある設定それぞれに確率の異なる2つのテーブルがあり、それらをランダムに選択。最低は128分の1、最高は25.6分の1。
以上の3つのモードに通常の6段階設定を掛け合わせることで、出玉の波を自在にコントロールできるわけだが、その組み合わせ総数はなんと5400通り。とてもじゃないが、自在に使いこなすことはできないレベルである。
なので、業者があらかじめホールからのリクエストに応じて納品時やメンテナンスの際にポケットコンピュータを使って各裏モードの施しておくのが通例だったようだ。
当時、自分も当然のことながら仕事やプライベートでよく『トライアンフ』を打った。確かに、ハマリも連チャンも強烈で、ヤケドするほどヒリヒリさせられたものである。
しかし、ヤケドよりも辛かったのは、新筺体の見えないところの仕上げの悪さ。下皿のコイン払い出し口の仕上げがもう凶器レベルに荒く、連チャンしてコインを掻き出す時には必ずといっていいほど、指先が擦れて血が滲んだものだ。
いまとなっては、それもまた遠い昔の、いい思い出なのだが。
(文=アニマルかつみ)