「一鞍一鞍大切に騎乗して良いパフォーマンスができる騎手になりたい」
デビュー時の抱負を忘れてしまったのだろうか。
JRAから決勝線手前での御法(騎乗ぶり)について、過怠金10万円の処分が下されたのは、新人の松本大輝騎手だ。
対象となったのは22日、小倉競馬場で行われた7Rの3歳上1勝クラス。松本騎手はこのレースで2番人気のリノ(牝4歳、栗東・寺島良厩舎)に騎乗して4着に入った。
しかし、松本騎手は、直線で外から追い込み3着に食い込めるか否かの場面で、決勝線手前にもかかわらず、腰を上げ流したように見える動作を行った。結果、3着にアタマ差という僅差だった。
最後まで追っていれば、着順が変わったかもしれないと見なされての処分だが、これは俗にいう「油断騎乗」疑惑とされるものである。
「油断騎乗」はJRAが公正競馬を保つために、特に厳しく制限しているルールの1つだ。実際、騎手の緩慢な所作が原因で着順が替わったと認められた場合等は、極めて厳しい制裁が下される。
近年でも、11年2月26日の小倉12Rで黛弘人騎手、12年12月22日の阪神5Rで四位洋文騎手(現調教師)が処分の対象となった。いずれもゴール直前で追う動作を緩めたことに対し、騎手としての「注意義務を著しく怠った油断騎乗」と判断され、約30日間の騎乗停止となった。
ここまで厳しい処分が下された背景には、競馬がスポーツだけでなく、ギャンブルとしての側面も含んでいることが大きい。着順が入れ替わることは、馬券購入者の「的中」、「不的中」に直結するため、“御法度”とされるのも当然のことだろう。
そして、松本騎手の「油断騎乗」疑惑のイメージは特に悪い。なぜならこれが2回目となるからである。
あろうことか松本騎手は5月29日の中京5Rでも、テーオーソロスへ騎乗した際、同様の理由で2日間の騎乗停止処分を受けていた。
前述した11年の黛騎手の油断騎乗でさえ、前例から18年ぶりの処分。今年デビューしたルーキーとはいえ、約3ヶ月後にまたしても“やらかして”しまったのだから、もはや前代未聞の失態と言わざるを得ない。
この一件を受けて、ネットの掲示板やSNSを中心に、一部のファンから不満が噴出する事態にまで発展。中には、「小倉競馬場に抗議の電話を入れた」や「長期間の騎乗停止を求める」といった過激な意見も見受けられた。
また、ある競馬記者は松本騎手について、危機感の欠如にも警鐘を鳴らしている。
「前回の処分からあまりに早過ぎた“再犯疑惑”でした。あってはならないことだけに、本人も決して意図的にやったことではないでしょうが、ファンや関係者の信頼を大きく損ねることになりかねません。
さすがにデビュー半年で2回目となると、看過できないレベルです。なぜこんなことになってしまったのか、改めて自身の騎乗を見つめ直す必要がありそうです」(競馬記者)
松本騎手は、同期で4番目に多い勝ち星を挙げており、競馬学校時代から高い騎乗技術を評価されている期待の新人騎手でもある。前代未聞の大失態を猛省し、同じミスを二度と起こさないように努力することが望まれる。
この苦い経験を糧に、さらなる騎乗技術向上へと繋げてもらいたい。
(文=寺沢アリマ)
<著者プロフィール>
大手スポーツ新聞社勤務を経て、編集部所属のライターへ。サラ系・ばん馬のどちらも嗜む二刀流で「競馬界の大谷翔平」を目指すも収支はマイナス。好きな競走馬はホクショウマサル。目指すは馬券的中31連勝だが、自己ベストは6連勝と道は険しい…。