紆余曲折がありながらも遂に開幕した東京オリンピック。残念ながら、オリンピック競技に競馬は入っていないが、馬が主役となる馬術が競技になっている。
馬術の歴史は古い。1900年パリオリンピックから競技として採用されている。日本が参加するようになったのは、1928年アムステルダムオリンピックからだ。
24日の「馬場馬術個人 予選」・「馬場馬術団体 予選」を皮切りに、来月7日の「障害馬術団体 決勝」まで12日間にわたって行われる。
近年では、引退した競走馬を乗馬として「第二の馬生」を歩ませる動きが盛んだ。認定NPO法人やファンクラブが設立されており、福永祐一騎手をはじめ角居勝彦元調教師などが支援している。
しかし、オリンピックの馬術競技では、サラブレッドは見かけない。あくまで、サラブレッドは「乗用馬」への転用だ。「馬術競技用馬」ではない。では、馬術競技で扱われる馬はいったいどのような馬で、何がサラブレッドと異なるのだろうか。
まず、馬は「軽種」・「中間種」・「重種」の3種類に主に分けられる。主に競馬で用いられるサラブレッドやアラブは軽種に分類される。また、ばんえい競馬で用いられる輓馬は「重種」に分類される。馬術競技で用いられる馬は、主に「中間種」に該当する。
しかし、軽種と中間種は見た目では大きな差はない。競走馬と馬術馬の違いは、外見ではなく中身にある。
第一に目的だ。サラブレッドらの軽種は、スピードと一定の耐久力を求めて作られた。対する、中間種は、軽快さや機敏な動きを目的に作られた。
次にメンタルだ。サラブレッドらの軽種は、他のサラブレッドに負けないよう闘争心を持って生まれてくることを目的に作られている。しかし、馬術競技では騎乗者の指示に従順、競技中に暴れない温和な性格が必要だ。中間種はそれらの性格になるように生産されている。
以上の理由から、オリンピックなどの大きな馬術大会では、サラブレッドは使われていない。そのため、競馬と馬術は近くて遠い関係だと思う方もいるかもしれない。
しかし、乗り手は別だ。パラリンピック馬術競技日本代表に元JRA騎手の高嶋活士選手が選ばれた。
高嶋選手は、11年3月に横山和生騎手らと共に騎手デビュー。13年2月に障害戦で落馬事故に遭い、右半身に麻痺が残ってしまった。2年以上リハビリに費やしたが、復帰は叶わず15年9月に引退を決意。障がい者馬術選手に転身した。
その後高嶋選手は、パラ馬術競技で障がいの程度が2番目に軽い「グレード4」の選手として活躍し、見事パラ日本代表の座を勝ち取った。JRA騎手時代は未勝利に終わったが、パラリンピックでは金メダルという大金星を目指す。
元騎手のパラ出場に現役騎手も喜びを見せている。武豊騎手は「注目競技は馬術です。(高嶋選手が)選ばれてすごくうれしかった。テレビで応援します」とエールを送っている。
武豊騎手が所属するJRAでも馬術競技を全面的にサポート。東京オリンピックの会場は、JRAの馬事公苑だ。大会期間中は、獣医の派遣など運営を全面的に協力する方針だ。また、日本選手が騎乗する馬の中にはJRAが購入した馬もいる。
馬の品種や競技では違いは見られるものの、様々な点で関連性がある競馬と馬術。馬術競技の模様は、競馬ファン御用達のグリーンチャンネルにて放映される予定だ。
(文=寺沢アリマ)
<著者プロフィール>
大手スポーツ新聞社勤務を経て、編集部所属のライターへ。サラ系・ばん馬のどちらも嗜む二刀流で「競馬界の大谷翔平」を目指すも収支はマイナス。好きな競走馬はホクショウマサル。目指すは馬券的中31連勝だが、自己ベストは6連勝と道は険しい…。