JRA 「半数以下」競馬界で始まったワクチン接種が一向に進まない? 若手騎手にはアクシデント発生、ジョッキーたちの「受けたくても受けられない」裏事情

 東京オリンピックの開催を間近に控え、競馬界においても関係者を対象としたワクチンの職域接種が始まった。トレセンなどでは調教師や厩務員なども続々と接種を受けている。

 振り返れば、最後に完全な有観客で開催されたG1は2020年2月にC.ルメール騎手とモズアスコットのコンビが制したフェブラリーS。現在は、事前にネット予約で指定席を購入した場合に限り、入場が認められるようになったとはいえ、完全な解除はまだ遠い。

 観戦に訪れた大観衆の歓声やG1レース独特の雰囲気などは、競馬を盛り上げる大きな要素のひとつでもある。ワクチン接種が進むことにより、一刻も早い通常開催への移行が望まれている。

 しかし、同じ競馬関係者でも、一部では思うように進んでいない現状があるようだ。

「実はジョッキーの接種率がかなり低いんです。東西で統計を取ったようですが、これから受ける人も含めて接種率は4割から5割程度で、約半数は受ける予定がないとの事です。受ける受けないは個人の問題ですし、これによって偏見や差別が生まれるのは良くない事ですが……。

ただ、騎手という職業は地方交流なども考えれば全国へ移動する機会が凄く多いですし、人と接する機会も多い職種ですから接種しておいた方がいいような気もしますね」(競馬記者)

 他の関係者が受けている中で、騎手がワクチン接種に積極的ではないというのは、少々意外な話ではあるが、ジョッキーという職業ゆえにデメリットを警戒している裏事情があるらしい。

 こちらについて、騎手側の意見として参考になりそうなものが次のコメントだ。

「これまでも徹底した対策をしていますし、こういった状況になって1年以上、大きな問題もなく開催が行われています。また、騎手からの感染も出ていませんから、今のところ受ける予定はないです。もし受けるとすると仕事上では月曜か火曜、もしくは金曜になってしまいます。

それに、副反応の事も考えると受けづらいんですよ。月曜か火曜に受けて副反応が出たら、水曜の追い切りの予定をキャンセルしなければいけませんし、もし金曜日だとしても土日の競馬で乗り替わらなくてはいけません。いずれにせよ関係者に迷惑をかける事になるので」(ある関東の中堅騎手)

 確かに、厚生労働省のホームページに記載されている内容によると、「ワクチンを接種した後は、接種部位の痛みが出たり、倦怠感、発熱、頭痛や関節痛などが生じることがあります」とも説明がされている。副反応が出た場合、アスリートである騎手にとって騎乗に影響する可能性が高く、二の足を踏んでしまうのも分かる話だ。

 そんな中、先週はワクチン接種と無関係と言えない出来事があった。

「週初めにワクチンを接種した小林脩斗騎手が、副反応によって肩が上がらなくなって水曜日の追い切りを急遽キャンセルする事態になったんです。週末までには回復してレースには影響がなかったですが、若い世代の方が副反応が出るとの事で、接種に対して後ろ向きな人が増えたと聞いてます」(同記者)

 JRAとしても接種を促すなら、騎手のこういった事情にも何かしらの配慮が求められるところだろう。

 トップクラスの騎手であれば、大きな心配はないかもしれないが、中堅や若手の場合は、自分が休んでいる間に他の騎手に回される事態は避けたいだろう。このような状況では、副反応でチャンスを逃がしたくない騎手がワクチン接種に積極的になれないのは当然ともいえる。

 極論ではあるが、接種率を上げるには1週間でも開催を止めて、副反応のリスクを軽減した環境をJRAが用意するくらいでなければ、遅々として進まない現状の打開とはならないかもしれない。

 勿論、その間の関係者への補償は必要とされるが……。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。