JRA ダートで「低迷」していた馬がまさかのサクセスストーリー!? 究極スプリンターの結晶「カナロア×バクシンオー」が続々スプリンターズS(G1)の有力候補に

 秋の大一番・スプリンターズS(G1)に向けて、魅力的な馬がまた1頭が誕生した。

 18日、福島競馬場で行われたメインレース・福島テレビオープン(OP)を快勝したキルロード(騙6、美浦・田村康仁厩舎)の走りは、そう感じられるだけの内容だったと言っても過言ではない。

 16頭立ての芝1200m戦。ハナを奪ったエレナアヴァンティの逃げは、前半3ハロンが32秒8という暴走気味のハイペース。これを2番手から追走したキルロードも、さすがに押っ付けながらの追走。前走がスローでの勝利だっただけに、苦しい展開に思われた。

 しかし、最終コーナーを力強く抜け出すと、そんな心配をよそに2着馬の追撃を余裕で振り切ってゴールした。

「休んだことで馬が良くなり充実しているので、この先も楽しみです」と振り返った内田博幸騎手のコメントからも、まだまだ上積みがありそうな雰囲気すらある。

 振り返れば、上昇一途の快進撃は昨年の11月から始まった。

 2走前、9番人気でみちのくS(3勝クラス)を制したキルロードは、前走のパラダイスS(L)でも10番人気の低評価。スローペースが味方したとはいえ、重賞勝ち実績のあるライバルを相手に逃げ切り勝ちで2連勝。

 今回の福島テレビオープンは、ファンも実力を認めて1番人気に支持。見事人気に応え、あれよあれよという間に3連勝を達成した。

 昨年5月から9着、競走中止、13着と、3連敗していた姿とは別馬のような3連勝である。まったくいいところのなかった馬のサクセスストーリーには、驚かされるばかりだ。

 伏線があったとすれば、昨年3月の連勝だろうか。

 17年7月のデビューから6連敗中だったキルロードが初勝利を挙げたのは、ダートに転戦した18年4月の未勝利戦。初勝利を手にし、新天地での活躍を期待されたものの、その後は7戦して全敗と低迷した。4歳夏を迎えた19年6月に陣営は去勢を決断する。

 再び芝に戻ったキルロードは昨年3月、キャリア初のスプリント戦で連勝を飾った。そこから前述の3連敗からの3連勝となる訳だが、芝1200m条件で見違えるような活躍をしたことは、同馬の血統を考えると当然だったのかもしれない。

 父は短距離G1・6勝を挙げたロードカナロア、母の父は稀代のスプリンターのサクラバクシンオー。日本競馬が誇るスプリンターの結晶ともいえる血が、キルロードの活躍を後押している。

 そして、この血統の活躍がキルロードだけではないことも見逃せない。

 実は2週前に小倉競馬場で開催されたCBC賞(G3)を8番人気で制したファストフォースもまた父ロードカナロア×母父サクラバクシンオーという血統構成。芝1200mレコードを更新した1分6秒0の勝ちタイムには驚かされても、血統的には当然にも感じられることが2頭の共通点である。

 これまでノーマークにも近かった2頭の覚醒は、秋の飛躍を期待せずにはいられない。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。