JRA勢「天下終焉」の時代……キャッスルトップ、カジノフォンテン何故、地方馬はここまで強くなったのか。地方の雄「メイセイオペラの奇跡」から22年

 14日に大井競馬場で行われた3歳ダートNo.1決定戦・ジャパンダートダービー(G1)は船橋所属のキャッスルトップ(牡3歳、船橋・渋谷信博厩舎)が勝利した。12番人気の低評価を覆し、上位人気の中央馬を一蹴。新王者として世代の頂点に立った。

 地方馬のジャパンダートダービー制覇は2017年のヒガシウィルウィン以来、4年ぶり。ただ、現在は当時とは情勢がやや異なるようだ。

「毎年のように中央馬が地方馬を相手に圧倒的な成績を収め、“ボーナスステージ”とさえ揶揄された時代もあった交流重賞ですが、最近は地方馬の健闘が目立っています。

中央馬の優位は変わりませんが、少なくとも地方馬のレベルは年々上がっており、最近では大きなレースで地方馬が中央勢を負かすシーンも珍しくないですね。両者の差は確実に縮まっていると思います」(競馬記者)

 実際に今年の交流重賞では川崎記念(G1)と、かしわ記念(G1)を船橋のカジノフォンテンが勝利と、地方馬としては異例の大活躍。先月の帝王賞(G1)でも元中央馬で大井所属のノンコノユメ、船橋所属のミューチャリーが2着、4着と中央馬と互角の争いを演じている。

 また、今年の3歳世代に至っては、ジャパンダートダービーのキャッスルトップだけでなく、昨冬に行われた全日本2歳優駿(G1)をアランバローズが優勝と、これまで行われたG1は、共に船橋勢が独占している状況だ。さらに先月の関東オークス(G2)でも浦和のケラススヴィアが2着に善戦しており、若い世代の充実も著しい。

 かつては「中央馬が地方馬との圧倒的な実力差を披露する舞台」と言っても過言ではなかった交流重賞。だがここにきて一体、何が起こっているのだろうか。

「地方の競馬関係者の努力も然ることながら、まず言えることは近年の地方馬の『質』が確実に上がっていることです。

地方でデビューする馬と中央でデビューする馬の質に差が生じるのは、偏に賞金額、つまりは1頭の馬が稼げる見込み賞金に大きな差があるからです。簡単にいえば馬主さんにとって、中央で1億円稼げそうなら1億円の馬を入れますし、地方で1000万円しか稼げそうにないなら、1000万円までの馬でなければ採算が合わないということです。

ただ、これは逆に言えば地方で高い賞金獲得が見込めるのであれば、それ相応の馬を地方でデビューさせるということ。そして、今の地方競馬は大井や船橋といった南関東を中心に、賞金の増額が活性化しています。以前と比べれば、確実に質の高い馬が地方デビューを選ぶようになりました」(競馬記者)

 実際に今年の3月には南関東重賞の1着賞金の増額が発表され、東京ダービーが800万円増額されて5000万円となった他、かしわ記念が1000万円増の7000万円、帝王賞も1000万円増の7000万円、ジャパンダートダービーに至っては1500万円も増額され6000万円になるなど、広範に渡って賞金アップが実施されている。

 この背景には、近年のインターネット投票の充実による地方競馬の売上増が大きな好影響をもたらしており、昨年も多くの興行がコロナ禍で業績を落としている一方、地方競馬は記録的な売上を連発した情勢がある。

 つまり、各地方競馬の主催の好調な売上が、レースの賞金増額に還元され、それが地方に流れる馬質の向上を呼び込んでいるというわけだ。地方競馬は近年、こういった好循環のサイクルを形成し、確実に中央競馬との差を詰めている。

 無論、中央とはまだ圧倒的な開きがあることは事実だ。しかし、中央でG1などの高額賞金レースが行われるのは、あくまで芝がメイン。ダートとなると、我々の想像以上に中央と地方の差はさらに小さくなっているのかもしれない。

 かつて1990年代終盤には、船橋のアブクマポーロと岩手のメイセイオペラという地方の怪物が中央馬をことごとく蹴散らし回った「奇跡的な時代」があった。そして、メイセイオペラが1999年のフェブラリーS(G1)を勝利し、ついに地方馬がJRAのG1を初めて勝つという歴史的快挙までやってのけたのだ。

 あれから22年。著しい発展を遂げた地方競馬の所属馬が、中央所属の馬を打ち負かすことは、もはや奇跡とは言えない時代がやってくるのだろうか。地方馬が一方的に負け続ける時代は終わり、「交流重賞」がようやく本来の意義を確立しようとしている。(文=銀シャリ松岡)

<著者プロフィール>
 天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。