JRA夏の新馬戦は「小学校の運動会」⁉ トラウマ残る「ムチ連打」はご法度、“メイクデビュー”の知られざる騎乗ぶりを徹底解説!!

 早いもので7月も半ばに差し掛かり、2歳新馬がデビューした6月から、1ヶ月半が経とうとしている。

 6月5日に幕を明けた今年の新馬戦は、7月11日までに44戦を消化。その成績を調べると、やはり気になるのが、評判馬が集まったジョッキーたちの戦績だ。

 先に結果を記せば、さすが全国リーディング上位を争うトップジョッキーたち。すでにクラシックロードを見据え、将来性豊かな新馬たちを自らの“お手馬”にすべく、夏場の新馬戦でも好結果を残している。

 先週の話題をさらったのが福永祐一騎手だ。

 10日の小倉5Rをサイードで勝利してから、11日に行われた2鞍の新馬戦も勝利。2日に渡るメイクデビュー3連勝の離れ業を演じた。

 ここまでメイクデビューで大活躍している福永騎手。新馬戦13鞍に騎乗して6勝、2着2回、3着3回と他の騎手を圧倒。勝率46.2%、連対率61.5%、複勝率84.6%は驚異的な成績だ。

 これに続くのが川田将雅騎手。

 こちらは新馬戦10鞍に騎乗して5勝、2着1回、3着2回と素晴らしい成績。勝率は福永騎手を超える50.0%を記録している。

 競馬場のスタンドや、大音量の場内放送、そしてファンファーレなど、見るモノ聞くモノ全てが珍しく、キョロキョロと物見ばかりする新馬たち。

 無事にゴールまで走ってくれれば“御の字”といえる、不安だらけの新馬戦で記録した川田騎手の勝率50.0%は、2回に1回は新馬を勝利に導くという特別な数字でもある。

 特に一戦必勝を狙い、今後の出走ローテを優位に進めたい陣営にとっては、まさに“心強い”ジョッキーといえるだろう。

 ちなみにここまで44頭の新馬が勝ち上がった計算になるが、そのうちの4分の1にあたる11頭を、福永、川田の両騎手が“抱えている”点は覚えておきたい。

 一方で新馬戦に騎乗する騎手について、勝利数だけで判断するのは早計かもしれない。

 かつて「新馬戦では、なるべくムチを使わないようにしている」とコメントしたのは、歴代2位の2943勝をあげた現役時代の岡部幸雄騎手。

 レースについてなにも知らない新馬たちは、あまりにも沢山のムチを叩かれることで、レースが嫌いになり、次走に影響が出るケースがあるという。

「初体験」で痛い思いをしたら、後々まで影響が出るのは当然のこと。常々「馬優先主義」を貫いていた岡部元騎手の発言は説得力があり、これは名手・武豊騎手も同主旨のコメントを残している。

 実際に横山典弘騎手などはレース中、新馬に対して少しでも不利があった場合は、そこから無理せず、馬を追わない騎乗が目立つ。これは決して「真剣に追わない」といったわけではない。新馬にレースに対して嫌な思いをさせたくない、レースを嫌いにならないようにという配慮にほかならない。

 サラブレッドが生まれるのは、だいたい2月から6月にかけて。つまり夏場の2歳新馬は、生まれてから2年ほどしか経っていないことになる。一般的に、馬の年齢×4〜5が人間の年齢といわれていることから、この時期に登場する新馬たちは、人間でいうところの8歳〜10歳。そんな「小学校の運動会」でもある新馬戦でビシビシとムチを叩かれたら、トラウマになることは必至だろう。

 さらに体力的にも「未完成」な新馬たち。初めてのレースではゴール前で力尽き、真っ直ぐ走らないこともしばしば。一流ジョッキーたちは、こうした背景をふまえてメイクデビューに挑んでいるのだ。

 果たして、前述した福永騎手や川田騎手が新馬戦でムチを連打しているだろうか。またメンタル面でもフィジカル面でも「未完成」な新馬たちの背に跨り、どんな騎乗方法で新馬を御しているのか。

 もちろん、馬券的中への飽くなき探究も興味深いが、新馬戦にはこうしたレースの見方があることも、新馬戦の楽しみ方の一つといえそうだ。

(文=鈴木TKO)

<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。