先月からスタートした2歳新馬戦。
スタートダッシュを決めたい素質馬たちが続々とデビューを果たしているが、「武豊騎手と凱旋門賞制覇」を目指していることで有名な「キーファーズ」は、ここまで京都2歳S(G3)を勝ったマイラプソディの半弟マイシンフォニー(4着)がデビューしただけで、比較的大人しいスタートとなっている。
代表の松島正昭氏が掲げる「武豊騎手と凱旋門賞(仏G1)制覇」という目標は、それだけで多くの競馬ファンを惹きつける魅力に溢れたチャレンジだ。
だが、このフランス競馬が誇る世界最高峰のレースは、これまで日本馬どころか、欧州馬以外が勝利した例さえない。日本のトップホースがことごとく惨敗した歴史は多くの競馬ファンの知るところであり、キーファーズのチャレンジを目標ではなく、“夢”と捉えている人も少なくないだろう。
今秋の凱旋門賞には、現在のところ先日のサンクルー大賞(仏G1)を制したブルームがキーファーズ勢の最有力候補であり以前、武豊騎手と凱旋門賞挑戦が叶わなかったリベンジの期待が高まっている。
しかし、本馬はこれがG1初制覇。超一線級が集う凱旋門賞では、やはり伏兵の域を出ないだけに、現地メディアでも善戦が期待されている程度の存在だ。キーファーズの「武豊騎手と凱旋門賞制覇」の悲願成就が現実味を帯びているとは、残念ながら言えなさそうだ。
ただ、今年のキーファーズの2歳馬ラインナップは、これまで以上の「本気度」が窺える。特に期待度の高さを感じさせるのが、欧州デビュー組だ。
すでにニンジャ(牡2歳)、ペロタン(牝2歳)がA.オブライエン厩舎で、ヤマトナデシコがA.ファーブル厩舎でデビュー予定。欧州馬以外が勝ったことがないレースなら、先述したブルームのように「欧州馬」に武豊騎手を乗せて凱旋門賞を勝ってしまおうという非常に合理的な作戦である。
「ブルームの場合は、現役途中で松島代表がクールモアグループから権利の一部を買い取る形でしたが、デビューから手掛けるこれら3頭は、さらに一歩踏み込んだ形になりますね。
特にニンジャは、半姉が欧州2歳女王という超良血馬。デビューは当然、向こう(欧州)になりそうですが、主戦は武豊騎手に依頼する方針のようです。A.オブライエン厩舎が2016年の、A.ファーブル厩舎が2019年の凱旋門賞をそれぞれ制しており、こういったところにもキーファーズの本気度が窺えます」(競馬記者)
ただキーファーズとしては、やはり「日本馬」で武豊騎手を乗せて凱旋門賞制覇が最大の目標だろう。遠征を強いられるハンデや、日本と欧州との馬場の違いなど、欧州馬による制覇と比較すると壁は決して低くない。
だが、そこで登場した“裏ワザ”的な存在が、友道康夫厩舎に入厩予定のヒャッカリョウラン(牝2歳)である。
本馬はアイルランド生まれのガリレオ産駒だ。しかし、そこをキーファーズがクールモアから購入し、あえて日本でデビューさせることとなったのがヒャッカリョウランである。昨今、マル外や持ち込み馬はそう珍しい存在でもないが、凱旋門賞を目標にあえて日本でデビューする欧州産馬は本馬くらいのものだろう。まさに松島代表のロマンが詰まった1頭だ。
「近年の凱旋門賞で旋風を巻き起こしているガリレオ産駒であることも頼もしいですが、それ以上に自身が凱旋門賞を勝ち、その子供のシーザスターズまで凱旋門賞を勝った欧州最高の名牝アーバンシーのインブリードが2×3という非常に濃い濃度で入っていることが、凱旋門賞へのこだわりを感じさせますね。
日本で重賞を勝ったガリレオ産駒はまだいませんが、日本の成績に問わず、一度は欧州で走る姿を見てみたい1頭です」(同)
日本でデビューすることは、日本馬による凱旋門賞制覇の意義も大きいが、それ以上に武豊騎手がより多くのコンタクトを取れることも大きい。新馬の育成に定評のある日本のレジェンドジョッキーが、異色の存在ヒャッカリョウランをどう仕上げていくのか。今から楽しみが膨らむ。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。