3日、夏の小倉開催が開幕。コロナ禍ということもあって、事前に限定販売された指定席は完売。観客数は少ないが、熱心な競馬ファンが集まり競馬場の熱気はピークに達したことだろう。
そんな小倉競馬場で、競馬ファンが思わず驚いてしまう出来事があった。
日本レコードが2レースも出たのだ。それも芝1800m・芝1200mという主要距離である。
最初の日本レコード更新は、小倉3Rの芝1800m戦。更新したのは、3歳未勝利のエスコーラ(牡3歳、栗東・中内田充正厩舎)だった。
同馬はディープインパクト産駒で、全姉に20年府中牝馬S(G2)を制したサラキア、半兄に19年朝日杯FS(G1)を制したサリオスがいる良血馬。今回がデビュー2戦目。デビュー戦の前走はスタートで遅れ、挽回すべくメンバー上がり2位の脚を繰り出すも4着と惜しい競馬であった。
デビュー戦の出遅れを受けて、陣営は同馬へブリンカーを着け集中力を増すよう工夫。これが功を奏したのか、向こう正面で一気に先頭へ踊り出ると直線で楽に後続を突き放し1分43秒8の芝1800m日本レコードを叩き出した。
次の日本レコード更新は、小倉10R戸畑特別(芝1200m)。更新した馬は、2勝クラスのプリモダルク(牝4歳、栗東・藤原英昭厩舎)である。
7枠8番から好スタートを切り逃げた同馬は、直線に入っても後続を寄せ付けずセーフティーリードを保ったままゴール。走破時計は1分6秒4で、海外G1を2勝したアグネスワールドの1分6秒5の従来レコードをコンマ1秒の差で更新した。
速い時計が出やすい開幕週の馬場とはいえ、日本レコードが1日に2レースも同じ競馬場で発生したことを踏まえると、小倉競馬場は「超高速馬場」であったと考えるのが自然である。
そうなると、気になってくるのが馬場の硬さを表す「クッション値」である。
一般的に、値が大きいほど馬場が硬く「時計が速くなりやすい」と言われており、JRAの公式ホームページにて各競馬場の値が開催されるたびに公表されている。
JRAによると、開催当日の朝8時時点での小倉競馬場のクッション値は9.9であった。この値は、さほど大きい値ではなく、「やや硬め」と「標準」の中間に位置する値である。そのため、クッション値の観点からは一概に「高速馬場」とは言えない。
そのため、JRAによると今回の小倉競馬場の芝コースは「標準的な硬さの馬場」であった。しかし、現実はレコードタイムが連発。芝1200mの1勝クラスでもレコードにコンマ4秒差の好時計が出ている。
小倉競馬場では、2月14日と21日に今回のクッション値を超える「10」を計測。しかし、開催後半で芝が傷んでいたせいか、今回のような速い時計で走った馬はいなかった。そのため、一概には言えないがクッション値「馬場の硬さ」と「時計の速さ」は無関係に思えてくる。
では、なぜ小倉競馬場でここまでレコードタイムが連発したのか。
プリモダルクでアグネスワールドのレコードを更新した福永祐一騎手は「硬くはないが、馬場が良すぎるから(時計が)速くなっていると思う」とコメント。やはり「馬場の硬さ」と「時計の速さ」は関係ないのだろうか。
実は、小倉競馬場は少量の雨が降った方が、時計が出やすいコースである可能性がある。
小倉競馬場の芝レコードタイムは軒並み晴天かつ良馬場で行われたときに出ているが、実は今回抜かれたアグネスワールドのタイムが出された際も、今回と同様、少量の雨が降った良馬場だった。
ただ、時計が出やすい状況であったとはいえ、能力無しにレコードタイムは更新できないはずだ。今回レコードを更新した2頭が今後大きく活躍すれば、今回のレコードもより輝きを増すに違いない。
(文=寺沢アリマ)
<著者プロフィール>
大手スポーツ新聞社勤務を経て、編集部所属のライターへ。サラ系・ばん馬のどちらも嗜む二刀流で「競馬界の大谷翔平」を目指すも収支はマイナス。好きな競走馬はホクショウマサル。目指すは馬券的中31連勝だが、自己ベストは6連勝と道は険しい…。