JRAその差わずか「10センチ」傷心のダービーから吹っ切れた!? “悩める若武者”横山武史が50戦ぶりの白星、C.ルメールと直接対決が待つ試練の北海道開催に殴り込み

 デビュー5年目、若干22歳の“若武者”横山武史騎手に、ようやく復調の兆しが見え始めた。

 19日は8鞍に騎乗して2勝、20日は10鞍で3勝と、先週は一気に5勝の“固め打ち”。2着1回、3着3回を加えて複勝率50%と、騎乗数の半分が馬券に絡む好騎乗をみせてくれた。

 今年のクラシックで主役の座を務めたのは横山武騎手で間違いない。今年上半期の競馬界の主役のひとりであったことに、異論を唱える競馬ファンはいないだろう。

 デビュー以来コンビを組むエフフォーリアで皐月賞(G1)を圧勝。自身の初G1制覇と同時に、祖父と父に続く、親子3代クラシック制覇を成し遂げる快挙を達成した。

 続く日本ダービー(G1)では単勝1.7倍の支持を集めるも、ハナ差で惜敗。そのドラマとともに、横山武騎手の“存在感”は間違いなく、老若男女の競馬ファンの記憶に刻まれたはずだ。

 1986年以降、20代の騎手がダービーで1番人気に推された例はわずか7件。単勝1.7倍の圧倒的1番人気は、相当なプレッシャーとなっていたことは想像に難くない。「競馬一家」で育った横山武騎手だからこそ、ダービー独自の“重圧“は、嫌でも感じていたと推測できる。

 しかし、タイム差なし、わずか10センチのハナ差で、JRA史上最年少ダービージョッキーの栄冠がするりと逃げてしまった結果はあまりにも残酷だった。

 実はそのダービー前後、なかなか白星を掴むことができなかった横山武騎手。

 ダービー騎乗前も、5月22日東京4R未勝利戦をアップストリームで勝利した以降のレースから、ダービーを含めた20戦で未勝利。ダービー直後の目黒記念(G2)からも、なんと29戦連続未勝利。その間、安田記念(G1)3着などの好走はあったが、勝ち切れない状況が続いていた。

 無敗で迎えたクラシック二冠達成へのプレッシャーが原因か、さらに“ダービーロス”ともいえる、燃え尽きたメンタルがもたらした“虚無感”もあったのか。待望の勝利をあげたのが、冒頭の6月19日の札幌6R新馬戦。ちょうど50戦ぶりとなる白星をもぎ取り、ようやく復活の兆しをみせたのだった。

 そんな横山武騎手の軌跡を振り返れば、昨年の北海道シリーズこそ、今年のブレイクにつながったターニングポイントといえるだろう。

 2017年のデビュー以来、北海道シリーズには毎年参戦。1年目は7勝も、2年目は10勝、3年目は15勝と、順調に勝ち星を積み上げてきた。そして迎えた20年。マークした35勝は、あのC.ルメール騎手と並ぶ勝利数と、大躍進を果たした横山武騎手。その存在感を十分にアピールした結果、秋以降の騎乗数増加につながった。

 今年は皐月賞優勝騎手としての実績を持って参戦する今夏の北海道シリーズ。昨年以上にいい馬が集まることが予想されるなか、やはり期待は同リーディング1位獲得だろう。当然ながらルメール騎手との直接対決に勝利しなければならない。

 昨夏の北海道開催で2人の直接対決は、まさにデッドヒートの争いを繰り広げていた。

 横山武騎手が札幌・函館で騎乗したのは212レース。35勝を挙げたなか、敗れたレースで19勝をマークしたのがルメール騎手。つまり横山武騎手から19個も白星を奪っていた。

 一方、ルメール騎手が札幌・函館で騎乗したのは146レース。同じく35勝を挙げるも、敗れたレースで17勝を記録したのが横山武騎手。こちらもルメール騎手に対して、17個も白星を奪っていた計算になる。

 つまり2人が同じレースに騎乗した直接対決では、お互いに20勝近くの勝利を奪い合っていたのだ。両者にとって互いの存在は、まさに“目の上のたんこぶ”といえるだろう。

 なかでも昨年8月23日、後に皐月賞馬となるエフフォーリアが勝利した札幌5Rの新馬戦の2着はルメール騎手のエスコバル。直接対決を制した横山武騎手はそのまま、エフフォーリアとコンビを組んでG1制覇を果たした。

 今年の北海道シリーズは、東京五輪の影響で変則的に開催されていることは周知の通り。マラソン競技が札幌で行われるため、札幌→函館→札幌という異例の開催日程で行われている。

 ついにその開催が、秒読み段階となった東京五輪。開催の是非について論じるつもりは毛頭ないが、日本国中に蔓延するモヤモヤした空気感を一掃すべく、スポーツ界も競馬界も、時代は新たなヒーローを求めているといえないだろうか。

 長きに渡り“王者”に君臨するルメール騎手に立ち向かう “若武者”が新たなヒーローとなり、「北の大地」で大暴れすることを期待したい。

(文=鈴木TKO)

<著者プロフィール>
野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。