武豊「メッチャいい!」と惚れ込んだ大器が引退……兄エアスピネルと「初の兄弟対決」は、あと一歩で幻に

 19日、2018年のチャレンジC(G3)を勝ったエアウィンザー(セン7歳、栗東・新谷功一厩舎)が登録を抹消。7月のプロキオンS(G3)に向けて調整されていたが、現役を引退し、滋賀県の甲南馬事公苑で乗馬になることが決まった。

「メッチャいい――!」

 2016年9月、デビュー前のエアウィンザーに騎乗した武豊騎手は、開口一番に若き大器を絶賛した。

 父はキングカメハメハ、母は秋華賞馬エアメサイアという超良血馬。そして何よりも、当時は全兄のエアスピネルが、武豊騎手とのコンビでクラシックを奮戦中。レジェンドジョッキーが期待を寄せるのも当然で、周囲の関係者からは「兄以上の大器」という声もあった。

 そんなエアウィンザーだったが、単勝1.3倍に推されたデビュー戦でいきなり躓いた。出遅れが響き、後の共同通信杯(G3)3着馬ムーヴザワールドにクビ差後れを取ったのだ。レース後、「まだ全体的に緩い。本気で走れない体」と今後の課題を指摘した武豊騎手も落胆の色が隠せない様子だった。

「当時2016年は翌年に大阪杯とホープフルSのG1昇格が控えており、朝日杯フューチュリティS(G1)を残してJRA全G1制覇にリーチを掛けていた武豊騎手にとっては、一時的にせよ記録を達成できる大きなチャンスという年でした。

それだけにエアウィンザーへの期待は大きかったと思いますね。兄のエアスピネルは前年の朝日杯FSで単勝1.5倍に推されながらも、ゴール前でリオンディーズに強襲されての2着。エアウィンザーは、そんなリオンディーズを手掛ける角居勝彦厩舎の管理馬という縁もあって、武豊騎手にしても『今度こそ』という思いがあったと思います」(競馬記者)

 武豊騎手の指摘通り、まだ幼さを残していたエアウィンザーは単勝1.1倍に応えて未勝利戦こそ勝利したものの、その後は連敗。クラシックの登竜門となる共同通信杯で6着に敗れると無念のコンビ解散……。エアウィンザーはこの春全休となった。

 次に武豊騎手×エアウィンザーのコンビが組まれたのは2年後だった。

 5歳になったエアウィンザーは本格化を迎え、別馬のように変身。チャレンジC勝利を含む怒涛の4連勝で金鯱賞(G2)を迎え、2年前のコンビ解散当時に残していた幼さはまったく残っていなかった。

 武豊騎手の期待ぶりは1週前追い切りに自ら騎乗したことからも窺える。金鯱賞は大阪杯の前哨戦として位置づけられたレースだが、武豊騎手には本番当時にドバイでの騎乗が控えていたこともあって、陣営には「目イチで仕上げてね(笑)」という“珍指令”が飛び出していた。

 しかし、レースではダノンプレミアムを抑えて1番人気に支持されたものの3着。おそらくはここがエアウィンザーの競走生活のハイライトであり、武豊騎手との最後のコンビでもあった。

 結局、エアウィンザーは浜中俊騎手が騎乗した大阪杯で5着に善戦したものの、その後は連戦連敗……。今年になって2月のフェブラリーS(G1)で兄のエアスピネルが2着に激走した影響もあって、ダート挑戦に最後の望みを懸けたが結果が出ず、ついに引退することとなった。

「実は兄のエアスピネルの次走もプロキオンSが予定されており、もし弟のエアウィンザーが現役のままなら、初の兄弟対決が実現していたかもしれません。

兄がクラシックで善戦し、弟も来年のクラシック候補と注目されていた時は、まさか未来の兄弟対決がダート1400mのプロキオンSで実現していたかもしれないなんて、誰も思わなかったでしょうね。早くから活躍したエアスピネルよりも、晩成傾向にあったエアウィンザーの方が早く引退したことも驚きですし、やはり競馬は難しいです」(別の記者)

 結局、武豊騎手がエアウィンザーで勝利したのは単勝1.1倍に推された未勝利戦のみ。残念な結果に終わってしまったが、2017年から2018年にかけて9戦連続1番人気を記録するなど、長くファンに愛された馬だった。(文=銀シャリ松岡)

<著者プロフィール>
 天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。