東京に生活の拠点を移して1年あまりが経過した1992年の、ちょうどいま頃の季節だったか。
第28回でも書いたとおり、ちょっとした縁があってパチスロ必勝ガイドの実戦企画に読者代表として参戦。
その結果、ライターに登用されることになるのだが、すぐさま原稿料だけで生活ができるようになるわけでもなく、夜中はパチ屋の掃除のバイトをして昼間は眠い目をこすりながらパチンコやパチスロを打つ、という生活が続いていた。
そんなある日のこと。編集部から「スペーススペクターに攻略法があるらしいので、調べてみてくれませんか」という依頼が舞い込んできた。
きけば、「ある手順」の後に1枚掛けで中段以外に7をテンパイさせ、コインを追加させると同時にビタ押しで777を揃えれば、通常どおりビッグがスタートするのだという。
前年秋にユニバーサル2-2号機で発覚したセット打法を彷彿させるネタだが、とにかく肝心の「ある手順」がなんなのかわからないので調べてみてほしい、というのだ。
その時点では「スペーススペクターに」と聞かされたので、西武新宿駅近くにある設置店に向かい、あれこれ試してみた。しかし、一度も成功することなく持ち金が尽き、「すみません、ダメでした」と編集部へ電話を入れ、アパートへと帰った。
それから1ヶ月ほどが経った頃だったか。深夜のバイトを終えた帰り道、立ち寄ったコンビニで搬入されたばかりのパチスロ必勝ガイド最新号を手に取ると、信じがたい文字が表紙に踊っていた。
「スペーススペクター&スペースバトルにセット打法発覚!!」
部屋に帰り、震える指で袋とじになったスクープ記事を開く。するとそこには、自分が見つけることのできなかった「ある手順」が写真付きで記されていた。
「ちょ、ちょっと!! 調べるのに、いくら遣ったと思ってんだよ!! なんで、判明した時点で教えてくれなかったんだよ!!」
怒りと憤りに震え、いますぐにでも編集部にクレームの電話を入れたい衝動に駆られたが、必死にそれを堪えた。
「機密保持のために仕方がなかったんだろう。それに自分は、まだまだお試し期間中の駆け出しの新人。偉そうなことを言える立場ではないじゃないか」
寝床に横たわり、そんな風に自分に言い聞かせた。
結局、「ボフセット」と名付けられたその攻略法は、ガイドに掲載された時点ではもうすでに対策されて終わっていた。
実際、気になってその日、例の隣町の店に様子を伺いに向かったのだが、『スペースバトル』のシマには誰ひとりとおらず、「1枚掛け・変則打ちでの遊技は固くお断りします」の貼り紙だけが、確かにここで騒動があったことを物語っていた。
その後、対策の対策バージョンが何度か発覚し誌面を賑わすことになるのだが、よっぽど自分はこの攻略法と縁が無かったのだろう。どれも一度たりとも、実践する機会に恵まれなかった。
同時期、『スペースバトル』『スペーススペクター』両機種は別の話題でも注目を集めていた。
前回も書いたとおり、本来は両機種ともREG比率が高く出玉の波が穏やかで遊べるマシンだった。しかし、ここへきて首都圏を中心に、ビッグばかりがバッキバキに連チャンするバージョンが急速に増えているのだという。
「ノーマルで使い物にならないなら裏モノ化してしまえ」という、当時はよくある例だったのだが、おそらくは攻略法対策のついでに「元気の素」を注入したのだろう。
ともかく、「絵柄がヘンテコで出玉もショボくツマラナイ台」として早々に不人気に終わるものと思われていた『スペースバトル』『スペーススペクター』両機種は、攻略法と裏モノ化によって一躍、「時の台」として話題と注目を集めるのであった。
(文=アニマルかつみ)