JRA武豊も「確執」経験した因縁の相手が藤田菜七子と急接近!? 熾烈な女性騎手のリーディング争いに頼れる援護射撃

 13日の東京競馬最終レース。3歳以上1勝クラスで勝利したのは、1番人気に支持されたアラビアンナイト。2着に2番人気テンハッピーローズで馬連440円という堅い決着だった。

 しかし、3着に入線したのは7番人気アドマイヤチャチャ。人気薄の同馬が3着に逃げ粘ったことで、3連複は4410円と中穴決着。3連単は13260円と、馬券的妙味がある決着となった。

 同馬をリードして、ゴール前までしぶとく逃げ粘る好騎乗をみせたのは、女性ジョッキー藤田菜七子騎手。

 実は、藤田騎手の「アドマイヤ軍団」への騎乗は同馬で3頭目。JRA通算2754回の騎乗を数える藤田騎手の貴重な”アドマイヤ勝負服姿”は珍しく、新鮮に映った競馬ファンもいただろう。

 藤田騎手がアドマイヤの馬に初騎乗したのは、2019年11月10日の福島記念(G3)のアドマイヤジャスタ。当時デビュー4年目で”初体験”を果たした藤田騎手だが、結果は7番人気で12着と惨敗。「ゲートのなかでソワソワして出遅れてしまった」と敗戦の弁を語っている。

 この敗戦が原因か、藤田騎手はその後、「アドマイヤ軍団」からお呼びが掛からず、次に騎乗したのは今年5月2日。なんと1年7ヶ月もの空白期間があった。

 このときは新潟8レース、4歳以上1勝クラスでアドマイヤレオに騎乗。4番人気の同馬を2着に導く好結果を出したことが評価されたのか、5月22日の同クラスのレースにも同馬で連続騎乗を果たした。

 アドマイヤレオを管理するのは美浦・柄崎孝厩舎。前出のアドマイヤチャチャも同厩舎の管理馬であり、こうした縁もあって藤田騎手と「アドマイヤ軍団」の間柄は、以前よりも近くなりつつある。

 1999年にアドマイヤベガで日本ダービー(G1)制覇するなど、90年代後半から00年代前半にピークを迎えた「アドマイヤ軍団」。このアドマイヤの冠を持つ馬のオーナー近藤利一氏は、2019年11月17日に77歳で死去。その後「アドマイヤ軍団」を相続したのは、利一氏の後妻の近藤旬子氏だ。

 去年の5月頃、旬子氏は所有していた2歳馬7頭を、ワールドプレミアの馬主で有名な大塚亮一氏に譲渡。一時は「馬主を辞めるのでは?」という噂も立った。

 しかし去年のセレクトセールでは、旬子氏の名義で1歳馬が取引されるなど、馬主稼業は継続予定。アドマイヤの冠名が残ることに胸をなでおろした競馬ファンも多かっただろう。

 このように「アドマイヤ軍団」の周辺には数々の“逸話”がある。なかでも有名なのが、レジェンド武豊騎手との“確執”だ。

 2007年の皐月賞(G1)で、1番人気アドマイヤオーラに騎乗した武豊騎手。後方からの騎乗で4着となり、人気を裏切る結果となった。

 さらに2週間後のクイーンエリザベス2世C(G1)でも、武豊騎手はアドマイヤムーンで3着。当時の近藤利一オーナーの騎手批判が直接の原因か定かではないが、2007年以降、武豊騎手の「アドマイヤ軍団」の騎乗数は大幅に減少した事実がある。

 そして2020年1月。超良血馬アドマイヤビルゴのデビュー戦の手綱をとったのが武豊騎手。「アドマイヤ軍団」との絶縁関係が回復したと話題となった。

 武豊騎手の例に限らず、近年の「アドマイヤ軍団」の鞍上は、バラエティに富むようになった感がある。その理由は近藤利一氏が亡くなり、旬子氏がオーナーに変わった時期とリンクしている。

 つまり、騎手起用の決裁権を持つ馬主が旬子氏となったことで、柔軟な騎手起用が実現。藤田騎手が久しぶりに「アドマイヤ軍団」に騎乗した点も、同じ理由かもしれない。

 前述の通り、藤田騎手が初めて「アドマイヤ軍団」の馬に騎乗したのは、利一氏が存命のとき。その後の長い空白期間を経て、今年5月に久しぶりに騎乗。新潟での連続騎乗や、冒頭のアドマイヤチャチャへの騎乗などは、旬子氏がオーナーになって以降のタイミングと見事にリンクする。

 一方で気になるのが、その藤田騎手の現在地だ。

 今年3月、藤田騎手以来5年ぶりに誕生した2人の女性騎手。そのうちの古川奈穂騎手は現在リハビリ中も、初白星を挙げた週から4週連続勝利をマークするなど、一躍“時の人”となった。

 もうひとりの永島まなみ騎手もデビュー後に無事、初勝利を挙げてから順調に成長中。12、13日ともに5鞍に騎乗した計10鞍の騎乗数は、実は当週の藤田騎手よりも多かった。

 その生存競争の激しさは、ジョッキー自身が最も知るところ。

 女性騎手のなかでも先輩格である藤田騎手にとって、今は1頭でも多くの騎乗依頼を求めているのが厳しい現実だ。

 事実、春先の新人女性騎手誕生の話題以降は、それほど話題に挙がらなくなった藤田騎手。春のG1戦線の裏で、ひっそりと騎乗しており、勝ち星もそれほど伸びていない。

 今年は10勝をマークしているが、先週は8鞍で前出の3着が精一杯。2週前は5鞍、3週前は4鞍と騎乗数が少ない。5月23日の勝利を最後に、勝ち星をあげていない点も気がかりだ。

 今後も藤田騎手が「アドマイヤ軍団」に騎乗する可能性はあるなか、今回の騎乗のように好結果を出し続けることで、さらに騎乗依頼は増え、他の馬主からも声が掛かるようになる……。

 現役女性ジョッキーの第一人者でもある藤田騎手が、再びクローズアップされ、その輝きを取り戻せるか。

 今回の好騎乗が、その足がかりとなることに期待したい。

(文=鈴木TKO)

<著者プロフィール>
野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。