民放各局がラブコメを放送している春ドラマの中で、良くも悪くも話題を集め続けているのが『リコカツ』(TBS系)と『恋はDeepに』(日本テレビ系)の2作。
ここまでは各話の放送が終わるたびに、ネット上では『リコカツ』に肯定的、『恋はDeepに』に否定的な声があがることがお約束のようになっている。
その賛否は主演を務める北川景子と石原さとみにも容赦なく浴びせられているが、業界内の評価とは必ずしも一致していない。むしろ、「2人とも成功と言えるのではないか」という声のほうが目立っているのだ。
視聴者の賛否と業界内の評価は、どこがどんな理由で異なっているのか。
スポンサーに好かれる石原さとみ
まず視聴者の賛否が分かれたのは、脚本・演出によるものであり、主演女優に責任を求める声はそれほど多くない。
『リコカツ』は離婚をテーマにしながらも、実際は“交際ゼロ日婚”をした主人公夫妻の純粋な恋愛模様を描いて視聴者の心をつかんでいる。一方の『恋はDeepに』は「ヒロインが人魚だった」という童話のようなファンタジーが「34歳の石原と39歳の綾野剛にミスマッチ」という厳しい声が多い。
実際、他のジャンルに比べるとラブコメの視聴者はシビアで、「感情移入できないストーリー」「共感しづらいヒロイン」への視線は厳しいものがある。リアリティで言えば両作ともかなり低いのだが、ラブコメというジャンルではそれが問題ではなく、「恋の楽しさや切なさ、ときめきや癒やしを感じられるかどうか」が重要であり、その意味で明暗が分かれたのだろう。
次に、主演女優に対する業界内の評価は、脚本・演出とはまったくの別物。スポンサーのいる民放連ドラの主演女優は、主に10~40代女性の支持を得ることが重要であり、なかでも「流行、美容、新商品などへの感度が高い層に訴求できる人」ほど好ましい。
その点で北川と石原は世代を問わず女優トップクラス。つまり、もし視聴率が低かったとしても、スポンサーから見たら視聴者層の質が高いため、起用は「成功」と見られるケースが多い。実際、石原のヘアメイクやファッションを目当てにドラマを見ている女性視聴者は、結婚後もほとんど減っていないという。
たとえば、『恋はDeepに』は、世帯視聴率や個人視聴率全体だけでなく、日本テレビが重点ターゲットに掲げるコアターゲット(13~49歳)の個人視聴率も低迷している。しかし、録画やネット視聴も含めて、前述した有力顧客候補の比率が高ければ、スポンサーを納得させられるのだ。
実は似ている同い年の北川と石原
北川景子と石原さとみは、ともに1986年生まれの34歳で同い年。それぞれスターダスト、ホリプロという大手事務所の看板女優で、既婚者であることも同じだ。ただし、ここまでの道のりは大きく異なる。
石原は伝統のある「ホリプロスカウトキャラバン」でグランプリに輝き、実質的なデビュー作となった2003年の映画『わたしのグランパ』で映画新人賞を総なめにしたほか、同年の朝ドラ『てるてる家族』(NHK)で主演を務めるなど、華々しいスタートを切った。以来、約19年間にわたって常に主演かヒロインの大役を務め続けている。
一方の北川の芸能界デビューも2003年だったが、こちらは「SEVENTEEN」(集英社)モデル。同年に『美少女戦士セーラームーン』(CBC・TBS系)で女優デビューを飾ったが、ゴールデンタイムの連ドラ初主演は2011年の『LADY~最後のプロファイル~』(TBS系)と遅かった。その後はコンスタントに主演作を重ね、『家売るオンナ』(日本テレビ系)というヒット作も生まれている。
女優としては、石原がデビューからトップシーンを走り続け、北川が地道に実績を積んできたという真逆の道のりだが、CM出演の多さは同等レベル。美容関係を筆頭に、若年層女性向けの商品が多く、ともに“美”の象徴的な女優となっている。常に彼女たちのヘアメイクやファッションに注目が集まっているのだから、主演女優として白羽の矢が立つのは当然なのだ。
石原さとみのライバルと言えば、これまでは同じ事務所の深田恭子や綾瀬はるか、あるいは同年代の戸田恵梨香や新垣結衣らの名が挙がっていたが、実は同い年で芸歴も同じ、さらに「美の象徴」という共通点を持つ北川景子なのかもしれない。今春のように、今後も華のある主演女優として並び立っていくのではないか。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)
●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。