5月30日、東京競馬場で行われた第88回日本ダービー(G1)は4番人気シャフリヤールが優勝。2018年生まれのサラブレッドの王者に輝いた。
競馬関係者にとっての1年は、「ダービーに始まってダービーに終わる」ともいわれる。ダービーが終わると、ひとまず1年の区切りを迎えた気持ちになるが、そんな想いを抱くと同時に、毎年ダービーが終わると、必ず思い出される“格言”がある。
特にオールドファンなら一度は耳にしたことがあるだろう。それは「ダービーで掲示板に載った馬は必ず出世する」という“格言”だ。つまりダービーで上位入線を果たした馬は、その後の活躍は約束されている…というもの。今回は1990年以降のダービーの結果成績を中心に検証してみた。
その“格言”が最も当てはまるのが、ダービー「2着」馬だ。
古くは1992年のライスシャワー、翌93年ビワハヤヒデ。さらに2000年代に入れば2002年のシンボリクリスエス、翌03年ゼンノロブロイの4頭が、G1レース3勝以上をマーク。さらにライスシャワーを除く3頭は、ダービーを終えた3歳秋初戦の神戸新聞杯(G2)を勝利している。
今年のダービー2着馬のエフフォーリアの父・エピファネイアも2013年のダービー2着後、ひと夏を超えて神戸新聞杯を快勝。この傾向からすると、エフフォーリアが神戸新聞杯に出走すれば、勝利は確実かもしれない。
続いてダービー「5着」馬もなかなかのもの。
2012年ゴールドシップを筆頭に、2001年のクロフネ、2007年ドリームジャーニー、2010年ルーラーシップなど、ダービー5着に終わったとは思えない面子がズラリ。
近年では2018年のブラストワンピース、2020年ディープボンドが、その後の活躍馬の代表格だろうか。ご存知、今年のダービー5着馬はサトノレイナス。牝馬ながら果敢にダービーに挑んだ大器の巻き返しに期待したい。
ダービー「3着」馬に目を向けると、こちらも1990年代に限れば名馬が並ぶ。
1993年ナリタタイシン、1997年メジロブライト、1999年テイエムオペラオーなど、錚々たるメンバーが名を連ねている。
2000年代以降では、2010年のヴィクトワールピサが出世した馬として挙げられるものの、気になるのが、近年のダービー3着馬のその後の成績がイマイチな点。
2014年マイネルフロストや2018年コズミックフォースなど、ダービーではそれぞれ12番人気、16番人気に推され、大方の予想を覆して3着に入った「穴馬」たちも、その後の成績はパッとしない。
2016年ディーマジェスティは翌17年秋に電撃引退を発表するなど、ダービーでの激走がその理由か定かではないが、体調面を理由に早期引退。今年のダービー3着馬のステラヴェローチェには、成績面よりも息の長い活躍を期待したい。
評価が分かれるのが「4着」馬だ。
過去のダービー「4着」馬で、出世した馬といえば1994年のフジノマッケンオー、1998年のセイウンスカイら。
とくに近年は2012年のワールドエース、2018年エタリオウのように、大物感を漂わせながらその期待を裏切るケースが多い印象を受ける。5歳で引退してしまった2019年サートゥルナーリアはその典型だろう。
「大物感」といえば、今年のダービー4着馬のグレートマジシャン。その典型にならなければよいが……と今から心配してしまうのは筆者だけだろうか。
そして最も気になるのがダービー「1着」馬のその後だ。もちろん過去のダービー馬には、日本競馬史上に残る名馬がズラリ勢揃い。
1991年トウカイテイオー、1994年ナリタブライアン、1998年スペシャルウィークら、彼らの名は今でも、競馬ファンの記憶に刻まれているだろう。さらに2000年代でも、2005年ディープインパクト、2011年オルフェーヴルなどがダービーを制している。
ところがここ数年のダービー馬は昔と比べると、“出世”しているとはいい難いメンバーを輩出。
2016年のマカヒキ、2018年ワグネリアンら、現役を続けている点は大きく評価できるが、その成績は過去のダービー馬と比べると、どうしても見劣りしてしまう感は否めない。
2019年ロジャーバローズは、ダービー後は1戦も走ることなく引退。さらに先日は、昨年のダービー馬でもありクラシック三冠馬・コントレイルの宝塚記念(G1)出走回避のニュースも飛び込んできた。
「疲れがとれない」とは管理する矢作芳人調教師のコメント。昔を知る競馬ファンとしては、ダービー馬の以降の活躍が振るわない点に、一抹の“寂しさ”を感じずにはいられない。
改めて今年のダービーを振り返れば、2018年に生まれたサラブレッドは、持込馬や輸入された外国産馬を含むと7398頭。そのうち、一生に一度の大舞台に立つことができたのは17頭に過ぎなかった。
さらにレース後、掲示板に載ることができた馬はわずか5頭。優勝したシャフリヤールを筆頭に、掲示板に載った馬たちの今後の活躍に期待したい。(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール>
野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。