先週23日に行われた3歳牝馬の頂上決戦オークス(G1)では、単勝1.9倍の無敗の女王ソダシがまさかの8着に敗れ、多くの競馬ファンが失意のどん底に突き落とされた。
レース後に須貝尚介調教師が「序盤で併せ馬の形になって引っ掛かった」と悔しさを露にした通り、1コーナーで川田将雅騎手のステラリアに、2コーナーでも柴田善臣騎手のストライプに絡まれるなど、大本命ならではの厳しいマークが大きな敗因の1つとなったことは間違いないだろう。
そうなると心配になるのが、今週30日の日本ダービー(G1)の大本命エフフォーリア(牡3歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)ではないだろうか。
ここまで無敗でクラシック第1弾を制したという点では、先週のソダシと同じ。それも皐月賞(G1)を3馬身以上で制した馬は、1994年のナリタブライアン、2011年のオルフェーヴルに続く3頭目であり、偉大な先輩2頭は後の三冠馬だ。すでに「二冠確定」とまで囁かれるエフフォーリアは、先週のソダシ以上に人気が集中することが予想される。
ただそれは同時に、ソダシ以上にライバルたちのマークがきつくなることも示唆しているはずだ。
無敗の皐月賞馬による日本ダービー制覇といえば、やはり昨年のコントレイルが真っ先に挙がる。皐月賞で2.7倍だった単勝オッズが、日本ダービーでは1.4倍まで上昇。ライバルたちも大本命馬の走りをますます警戒していたが、最後の直線で鋭く抜け出すと3馬身差の圧勝で難なく二冠を達成した。
昨年のコントレイルの快勝劇は、2年連続の無敗三冠を目指すエフフォーリアにとって大きな希望だ。だが、この2頭に「極めて大きな違い」があることは、あまり知られていない。
「前半の位置取りが素晴らしかったし、ノースヒルズ勢が周りを固めたからね」
昨年の日本ダービー直後、元JRA騎手のアンカツこと安藤勝己氏が自身のTwitterでコントレイルの勝因の1つとして示唆したのが、ノースヒルズ軍団の“連係プレー”だ。
コントレイルを所有する前田晋二氏らノースヒルズ軍団は、無敗の皐月賞馬コントレイルを筆頭に、きさらぎ賞(G3)を勝ったコルテジア、京都新聞杯(G2)を勝ったディープボンドと3頭の有力馬を送り込んでいた。
レースでは、その3頭がガッチリと布陣を組むと、最後の直線ではコルテジアとディープボンドが一足先に抜け出したところで、コントレイルが満を持してスタート。大本命馬が順調にレースを進め、あっさりと抜け出した。当時を記者が振り返る。
「競馬はあくまで全馬が全力で勝利を目指す公正確保が最重要なので、あまり大きな声では言えませんが、ノースヒルズ軍団にとっては完璧なレースだったのではないでしょうか。
内から好スタートを決めたコントレイルでしたが、主戦の福永祐一騎手が『2番手(コルテジア)の後ろに入れた、そこが大きかったですね』と話した通り、すぐにコルテジアがその前に出て、ディープボンドが外からぴったりと併走。
これがライバル陣営だったら、コントレイルと福永騎手にとってプレッシャーになりますが、同じ勝負服(正確には若干異なる)がすぐ近くにいたことで安心感があったと思います」(競馬記者)
大本命馬がレースを勝ち切るには、持てる力を100%出せるかが最大の課題となる。逆に言えば、ライバルたちは“それ”をさせないように様々な駆け引きを行う。安藤氏が指摘した通り、コントレイルにはライバルたちを跳ね返す“仲間”がいた。
その一方で今年の大本命エフフォーリアは、ノーザンファーム産のキャロットファームの所属馬だ。
「今年の日本ダービーにもノーザンファームの生産馬が数多く出走する予定ですが、キャロットファーム、サンデーレーシング、シルクレーシングといった主戦力の一口馬主クラブは、お互いが長年の覇権を争っている間柄。
実際に、先週のオークスでソダシを厳しくマークしたステラリアは社台レースホースの所属馬でしたし、残念ながら今年のエフフォーリアに、昨年のノースヒルズ軍団のような一体感は見られないでしょうね。同世代相手に実力が抜けていることは確かですが、2番人気だった皐月賞のようなスムーズなレースができるとは限らないと思います」(同)
「2400mで折り合いがポイントになると思う。調教でもリラックスして走れているし、何より賢い馬なので大丈夫だと思います」
『夕刊フジ』の取材にエフフォーリアへの信頼を語った横山武史騎手。能力を出し切れば勝利に最も近い存在であることは誰の目にも明らかだが、果たして待っているのはソダシか、コントレイルか――。
今年も競馬の祭典が近づいてきた。(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。