23日に東京競馬場で行われたオークス(G1)は、3番人気のユーバーレーベン(牝3歳、美浦・手塚貴久厩舎)が優勝。本馬が所属するサラブレッドクラブ・ラフィアンにとっては、今年3月に他界した岡田繁幸さんに捧げるクラブ初のクラシック制覇となった。
自慢の末脚が、ついに届いた。昨年の阪神JF(G1)でソダシ、サトノレイナスを超える上がり最速の末脚を繰り出しながら、これまでいつも届きそうで届かず……6戦1勝という歯痒い成績で樫の舞台に挑んだユーバーレーベン。だが、この日は残り200mで集団をまとめて飲み込むと、最後まで追撃を凌ぎ切って同世代の頂点に立った。
そんな勝ち味に遅い新女王を結果的に“アシスト”してしまったのが、クールキャット(牝3歳、美浦・奥村武厩舎)に騎乗した武豊騎手ではないだろうか。
トライアルのフローラS(G2)を勝利したことで、本番を迎えたこの日も6番人気と上々の評価だったクールキャット。オークス3勝の武豊騎手を新パートナーに迎えたことから、一発を期待したファンも少なくなかったはずだ。
しかし、レースではそんなレジェンドジョッキーの精密な体内時計に疑問を持たざるを得ない結果となってしまった。
好スタートからハナを切るという意外な展開で幕を開けたレース。武豊騎手が「ペース的にはスローでいいペースだった」と振り返る前半は、1000m通過が59.9秒。すべて良馬場で行われた過去5年のオークスの平均が60秒だったことを踏まえると、残念ながらスローとは言えない流れだった。
「表面上の時計的には例年と大差ないミドルペースでしたが、今年は前日に雨が降った影響もあって、同じ良馬場でも例年よりやや時計の掛かる馬場。同日に同舞台で行われた未勝利戦の1000m通過が63秒だったことを考慮すれば、決して前が楽なペースではなかったようにも思えます。逃げたクールキャットにとっては、やや厳しい展開になりましたね」(競馬記者)
さらに武豊騎手とクールキャットにとって不幸だったのは、単勝1.9倍のソダシが好位グループにいたことだ。
大本命の抜け出しを警戒したライバルたちが早めのスパート。武豊騎手が「4コーナーで『後ろを待たずに離して』と思ったけど、全然伸びなかった」と悔しがったように、先行集団にとっては万事休すといった流れだった。
結果的にハナを切ったクールキャットが14着に沈んだだけでなく、好位から馬群に沈んだソダシ、2番手追走から13着に大敗した5番人気ステラリアを始め、先行勢は軒並み壊滅……。
一方で、後方で脚を溜めていた16番人気のハギノピリナが3着、10番人気のタガノパッションが4着するなど、明らかに後方有利な結果を招いてしまった。
これにはクールキャットを応援していたネット上のファンも「何故、逃げた?」「逃げたことが敗因」と武豊騎手の騎乗に疑問を持った様子。本馬は途中からハナを切った1月のフェアリーS(G3)でも10着に大敗しており、ファンにとっては消化不良のレースとなってしまったようだ。
「調教の動きが今日は出なかった。残念……」
レース後、そう敗戦を振り返った武豊騎手はオークス3勝を誇りながらも、1996年のエアグルーヴを最後に19連敗中だ。それもその間、ファレノプシス、トゥザヴィクトリー、アドマイヤグルーヴ、ダンスインザムード、アドマイヤキッスといった1番人気馬に騎乗しながら敗れ続けている。
今週は星野源と新垣結衣の“逃げ恥婚”が大きな話題を呼んだが、競馬界のレジェンドジョッキーにとっては、まさに“逃げ恥”をかく結果となってしまった。(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。