5月2日、阪神競馬場で開催される古馬ステイヤーの頂上決戦・天皇賞・春(G1)。淀の3200mで行われる伝統の一戦だが、京都競馬場改修工事の関係で今年は阪神での開催。昨年、一昨年と連覇を達成したフィエールマンがターフを去り、次代を担うヒーローの誕生が期待されている。
戦前の下馬評では阪神大賞典(G2)を5馬身差の楽勝で制したディープボンド、同レースで単勝1.3倍の圧倒的1番人気で7着に敗れたアリストテレス、日経賞(G2)で3着に入ったワールドプレミアの3頭に人気が集まっている。
他にもカレンブーケドールやウインマリリンなど牝馬の参戦もあり、多士済々なメンバーが集結したが、メンバー中でG1勝利実績があるのはワールドプレミアとマカヒキの2頭のみ。
両馬の比較では16年のダービー馬とはいえ、8歳のマカヒキよりも、長距離戦を得意とする19年の菊花賞馬ワールドプレミア(牡5、栗東・友道康夫厩舎)が優位と見るべきか。
同年の有馬記念(G1)で3着に敗れて以降は、体調不良により長期離脱を強いられたが、昨年のジャパンC(G1)で復帰を飾り、今回が4走目。この中間も順調な調整過程を歩んでおり、陣営としても力が入る大舞台だ。
だが、仕上がりに自信をもつワールドプレミア陣営にとって誤算があったとすれば、同馬の主戦を務めていた武豊騎手の骨折によって、福永祐一騎手へと乗り替わりとなったことだろう。
武豊騎手といえば、「平成の盾男」の異名を持つほど天皇賞を得意としてきた名手。ワールドプレミアの菊花賞制覇も武豊騎手の手腕によるところが大きかった。復帰時期が不鮮明だった武豊騎手が驚異的な回復を見せ、結果的に間に合うこととなったとはいえ、すでに乗り替わりが発表された後のタイミング。武豊騎手は天皇賞・春にディバインフォースとのコンビで参戦が決定した。
「武豊騎手が自身の公式サイトで“現時点での騎乗予定馬はゼロ”と綴っていたことからも、ワールドプレミア降板の可能性はありました。ワールドプレミア陣営としても、万全な状態でないのなら他の騎手の選択肢を探る必要もあったため、福永祐一騎手に白羽の矢が立ったということでしょう。
ただ、福永騎手がトップジョッキーの一人であることには間違いはありませんが、長距離のレースで武豊騎手に一日の長があることは確かです。福永騎手としては鞍上弱化だったと言われないためにも、ここで結果を出したいところです」(競馬記者)
以下は芝3000m以上のG1(菊花賞、天皇賞・春)における両者の成績である。
福永祐一 2-5-2-31/40、勝率5.0%、連対率17.5%、複勝率22.5%
武豊 13-7-7-28/55、勝率23.6%、連対率36.4%、複勝率49.1%
全盛期の成績を含むため、武豊騎手の騎乗馬の質を考慮すると当然の結果かもしれないが、得意とする京都競馬場だけにさすがの成績といえる。
一方、福永騎手の2勝の内訳は2013年菊花賞のエピファネイア(単勝1.6倍)と2020年菊花賞のコントレイル(単勝1.1倍)で挙げたもの。勝利数で頼りなく映るのは仕方ないが、07年天皇賞・春の2着エリモエクスパイア(11番人気)、16年菊花賞の2着レインボーライン(9番人気)、19年菊花賞のサトノルークス(8番人気)など、穴馬でもしっかりと結果を残しているのは魅力だ。
ひとつ懸念があるとすれば、今回と同じように武豊騎手の負傷により、主戦を務めていたエアスピネルがR.ムーア騎手へ乗り替わりとなった2017年のマイルCS(G1)の例だろう。このとき、最終的に間に合った武豊騎手はジョーストリクトリに騎乗して最下位の18着。ムーア騎手のエアスピネルはハナ差の2着と敗れている。
当時の状況に酷似する今回の一件だが、福永騎手はワールドプレミアを1着に導くことができるだろうか。その手綱捌きに注目したい。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。