異例の超ロングラン開催となった今年の阪神開催も残すところあと1週。5月2日には、掉尾を飾る春の天皇賞(G1)が開催される。
例年なら京都競馬場で行われる伝統の一戦も、今年はご存知のとおり、改修工事の影響で阪神開催。コース替わりに注目する向きもあるが、同時に気になるのが、長期開催で酷使され続けた阪神競馬場の芝状態だ。
JRAの歴史を振り返ってもこれほど長期間、同一競馬場で開催された例は少ない。その芝状態を確かめるべく、公開されて間もないクッション値の推移とあわせて推測してみたい。
“通常営業”の阪神開催の例を挙げると、2018年と翌19年はともに開催回数5回で、開催日は42日だった。
しかし、京都の改修工事が始まった2020年11月から、阪神競馬場の” 苦難”の日々が始まる。
2020年の開催回数は6回となり、開催日は48日へと増加。工事がスタートした京都開催に替わり、例年は12月に第5回開催となる阪神開催が11月に組み込まれ、さらに12月に第6回開催が行われた。
そして迎えた2021年は、怒涛の阪神開催ラッシュ。
2月13日から3月21日までの6週間で計12日の第1回阪神開催を終えると、ぶっ続けで第2回阪神開催に突入。3月27日から6週後の5月2日までの計12日の開催を終えて、ようやくフィナーレを迎えるのだ。
こうして第1・2回開催ともに12日間、合計24日にも渡る超ロングラン開催を経た阪神競馬場。例年以上に酷使された芝状態は、「劣化して当然」という思い込みのもと、2020年9月から公開されたクッション値を調べてみた。
クッション値とは、JRA公式サイトでは「馬場のクッション性を数値で表したもの」と定義している。その数値が高ければ、馬場の反発力が高いといい、つまり数値が高ければ「堅い馬場」となり、全体時計や上がり時計の速さと関連するといえる数値だ。
すると、意外な結果が判明。
その数値はそれほど変化なく、むしろ週末の雨に泣かされた馬場コンディションを考えると、わずかな差に収めている阪神競馬場の造園課の「職人芸」に驚かされる結果となった。
先に記した第1・2回阪神開催の、すべてのクッション値を記すことは省略するが、その数値は絶対的な安定感を誇っていた。
毎週金曜日10時、土・日ともに朝7時30分の3回に分けて発表されるクッション値。つまり第1回阪神開催の計12日で、都合33回も発表されているが、最も高い数値は10.6で、低い数値は8.9。その差は1.7と、わずかな差に収まっていた。
第2回阪神開催で発表されている数値を見ても、最高値10.3に対して最低値は8.8と、その差はわずか1.5。
JRAの公式サイトでは、クッション値8以上10未満が「標準」で、10以上12が「やや硬め」と定義されており、その差2以内の範囲に収まっていれば、馬場状態の変化は、ほぼなしと想定できる。
特に今年の阪神開催は、例年以上に雨に祟られた感もある。3月21日の阪神大賞典(G2)や、4月4日の大阪杯(G1)の馬場状態はともに「重」。その後の11日の桜花賞(G1)は「良」に回復するも、先々週17日のアーリントンC(G3)は「重」と、例年以上に馬場コンディションを一定に保つのは至難の技だったはずだ。
異例の超ロングラン開催と、例年にない悪天候にも負けず、阪神競馬場の造園課の職人芸によって、阪神競馬場の芝状態は守られたといっても良いだろう。
あの甲子園球場のグラウンドの守護神ともよばれる阪神園芸は、天候によって外野の芝・内野の土コンディションが大きく左右されるなか、常にその状態をキープ。その「職人芸」は、プロ野球界ではもちろん、夏の甲子園大会でも常々絶賛されている。
その「阪神園芸」に勝るとも劣らない、阪神競馬場の造園課の「職人芸」を見せつけられた感のある、今年の阪神開催。もちろん、阪神競馬場の「芝の守護神」といえる造園課の努力も称賛に値するが、今はただ、酷使され続けた阪神競馬場の芝に対して「お疲れさまでした……」と優しく語りかけたい。