今春は「数十年に一度」と言われるほど、朝8時台の情報番組に大きな動きがあったが、スタートから3週間が過ぎた今、大まかな傾向と業界内の評価が見えてきた。
MCの交替があった『スッキリ』(日本テレビ系)と『あさイチ』(NHK)は良くも悪くも現状維持である一方、新番組の『めざまし8』(フジテレビ系)と『ラヴィット!』(TBS系)は、この3週間あまり何かと話題を集め続けている。
『めざまし8』は、MCを務める谷原章介と永島優美アナの好感度もあって厳しい声は少なく、「もう何年も見ているみたい」などと早くも受け入れられているようなコメントが目立つ。また、メディアによる批判的な記事もほとんど見られない。
『ラヴィット!』は、大手チェーン店のランキングクイズなどを日替わりで見せる構成と、芸人を集めたキャスティングに批判が続出。メディアも「一人負け」「早くも視聴率1%台」などの酷評記事を連発する厳しいスタートとなった。
すでに『めざまし8』=順調、『ラヴィット!』=失敗というムードが生まれつつあるが、果たして本当にそうなのか。業界内の声を拾っていくと、必ずしもそうではない様子が伝わってきた。
新番組なのに既視感が強い『めざまし8』
『めざまし8』の「もう何年も見ているみたい」というコメントは決してポジティブな意味だけではなく、「新鮮味がない」「既視感が強い」というネガティブなニュアンスを多分に含んでいる。
クレバーな谷原は自分の感情や言葉を交えてそつなく進行しているが、メディアやSNSが動きたくなるようなコメントは、ほとんど見られない。そんな手堅い谷原とコンビを組む永島アナも先輩アナらから「まじめすぎる」「もっとくだけても大丈夫」などと言われる人柄であり、生放送番組の魅力であるはずの臨場感や意外性に欠けているのだ。
つまり、「この2人がMCを務める以上、一定の好感度をキープできる半面、話題を集めることも少ない」ということ。「現在と同等レベルの視聴習慣は定着させられても、そこから上がる可能性は低そう」と見られているのだ。
視聴率獲得に直結する中高年層は『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)に囲い込まれ、もともと分母の少ない10~40代はエンタメ路線を爆走する『スッキリ』がつかんでいる。「硬派なニュースから、エンタメ、生活情報までを幅広く扱う」という方針の『めざまし8』は、そんな両番組の間という中途半端な立ち位置であり、業界内で「順調」という声は聞こえてこない。
戦略はいいが志の低い『ラヴィット!』
一方、『ラヴィット!』は前述したように、セブン-イレブン、西友、ユニクロ、無印良品など、「大手チェーン店のランキングクイズなどを中心に据えた構成を変えない限り、壊滅的に低い視聴率が浮上することはない」と見られている。そもそも大手チェーンのコーナーは自局で放送している『ジョブチューン』などとほとんど変わらず、それを「わざわざ慌ただしい朝に放送している」というだけだ。
大手チェーンのコーナーなら、商品やデータの準備がスムーズで、取材が不要な上に制作費を抑えられ、広告収入への期待も膨らむなど、制作サイドにとっては都合のいいことだらけ。視聴者より制作サイドを優先させた志の低い構成が批判されるのは当然だろう。
しかし、『ラヴィット!』が絶望的かと言えば、そうとも言い切れない。スタート時の構成に志の低さが見える半面、「ニュースを扱わず生活情報に特化する」という思い切った戦略は評価できるからだ。
民放各局は早朝5時台から夜19時まで約13時間にわたって、生放送の情報番組ばかり。目先の数字を求めてテレビそのものがニュースチャンネルと化す中、違うものを見せようとする『ラヴィット!』の姿勢は貴重だ。
実際、唯一ほとんどニュースを扱わず生活情報を中心に放送している『あさイチ』は視聴者の支持を獲得している。『ラヴィット!』も構成を見直し、それが支持を集めれば、少なくとも『はなまるマーケット』(TBS系)くらいの数字は得られるはずだ。
ただ、このままでは「世帯視聴率0%台」の危機があるほか、番組に負のイメージが定着して浮上が見込めなくなるだけに、「もう少し様子を見てから」ではなく、「一刻も早く変えた方がいい」だろう。
帯番組は最初からうまくいかない
もともと朝昼を問わず「帯番組の定着には数年かかる」と言われているだけに、現在の状況がどんなに悪かったとしても、「次か、その次の改編でエキセントリックに打ち切る」という最大の愚策だけは避けなければいけない。
過去を振り返れば、同じ生活情報をベースにした『はなまるマーケット』も、『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)も視聴習慣の定着には時間がかかっていた。さらに、『羽鳥慎一モーニングショー』『ひるおび!』(TBS系)、『バイキングMORE』(フジテレビ系)などのニュース系情報番組も同様であり、帯番組共通の特徴と言える。ガラッと変えるのだから、最初からうまくわけがないのだ。
放送しながら課題と向き合い、辛抱強くトライアンドエラーを繰り返しながら、視聴者のニーズをつかんでいく。地道な作業だが、やはり帯番組にはそれ以外の必勝法はないのだろう。
1年後、『めざまし8』の谷原と永島アナが毒舌キャラを採り入れて浮上しているかもしれないし、『ラヴィット!』がオリジナリティのある企画を連発しているかもしれない。もちろん両番組ともに打ち切りの可能性がゼロとは言えないが、スタートしたばかりの分、これから試せることは多いはずだ。
その意味で、あくまで制作サイドの姿勢次第ではあるが、両番組の先行きは決して暗くないように見える。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)
●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。