絶対王者の盛大な逆襲劇だった。
11日に行われた牝馬クラシック第1段・桜花賞(G1)は、無敗の2歳女王ソダシが古馬も含めたスーパーレコードで快勝。2着にサトノレイナス、3着ファインルージュ、4着アカイトリノムスメまでが0.2秒差にひしめく混戦を制した。
白毛のニューヒロインの誕生に沸きに沸いた先週の競馬。その中で改めて「絶対」を強調したのが、リーディング10連覇中のノーザンファームを筆頭とした王者・社台グループだろう。
昨年は生産界の絶対王者にとって、屈辱的なクラシックシーズンだった。
牡馬のコントレイル、牝馬のデアリングタクトという無敗の三冠馬が2頭同時に出現した歴史的な一年だったが、社台グループは18年ぶりにクラシック無冠という屈辱を味わったのだ。
今年はそんな昨年のリベンジを懸けたシーズンになるが、社台グループが生産した現3歳馬たちはライバルを圧倒。この桜花賞でも1着から7着までノーザンファームが独占し、社台グループ(レイクヴィラファームを含む)という括りでは11着まで、それらの生産馬がズラリと並んだ。
それもそのはず。今年の桜花賞の18頭の出走馬で、社台グループ以外で生産されたのは、わずか5頭(内1頭は社台ファームの持ち込み馬)。つまり社台グループは今年の桜花賞に14頭という大攻勢をかけており、かつ1番人気から9番人気までを独占。戦う前から「ほぼ勝っていた」と述べても過言ではなかったのだ。
そんな絶対王者の中の絶対王者である社台グループだが、これだけの大成功の秘訣は「2つの幸運」からだと言われている。
今なおキタサンブラックやダイワメジャーなどを通じて、その血を繁栄させ続ける大種牡馬ノーザンテーストを、そしてディープインパクトの父として知られるサンデーサイレンスを米国から導入したエピソードは、あまりにも有名だ。
2頭とも競馬界の革命と言えるほど絶大な影響力を発揮し、同時にこれが社台グループを世界でも稀に見る成功者へ導いた。
だが、その一方で「2つの僥倖」のことは、あまり知られていない。
現在、北海道にノーザンファーム、社台ファーム、社台コーポレーション白老ファームなど、広大な生産牧場を所有している社台グループだが、その祖となる社台ファームの出発は、実は北海道ではなく千葉だった。
グループの創業者・吉田善哉氏が8頭の繁殖牝馬を携えて誕生した社台ファーム。当時は中小の小さな牧場に過ぎなかったが、なんとこの土地が成田空港建設のために高騰。まさに僥倖という形で、社台ファームはサラブレッド生産の本場・北海道に進出することとなる。
吉田氏が千葉の土地の売却金で購入したのが、北海道の白老と錦岡にある広大な敷地だった。この白老の牧場が、後の白老ファームである。つまり、実は社台グループの中で最も長い歴史があるのは白老ファームなのだ。
そして、もう1つの錦岡にあった土地には、さらなる僥倖が舞い込む。苫小牧港の拡張によるベッドタウン計画で、市によって高額で買い取られることになったのだ。吉田氏はこの資産で、さらに千歳と早来に土地を購入。これらが生産界の絶対王者・社台グループの礎となった。
まさに「僥倖」という意味では、有名なサンデーサイレンスやノーザンテーストの導入を超える幸運ぶりと言えるだろう。
今週の皐月賞(G1)にもエフフォーリア、ダノンザキッド、ヴィクティファルス、ステラヴェローチェ、ラーゴム、アドマイヤハダル、グラティアス、ヨーホーレイクら有力馬を送り込む社台グループ。
18年ぶりの屈辱を味わった昨年のリベンジへ、桜花賞同様すでに「勝利は確実」と言えるだけの陣容ではないだろうか。
(文=浅井宗次郎)
<著者プロフィール>
アイネスフウジンが日本ダービーを勝った1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」。