『知ってるワイフ』近年の連ドラ最高クラスのハッピーエンドが期待できる2つの理由

 ついに、「夫婦だったんだ。俺たちは結婚してた。俺の妻だったんだよ」と澪(広瀬アリス)に告げた元春(大倉忠義)。3月11日に放送された『知ってるワイフ』(フジテレビ系)第10話は、最終話前らしくクライマックスに向けて一気に物語が動いていった。

 沙也佳(瀧本美織)の人生も暗転させてしまったことで、「俺のせいでみんな不幸になる」と落胆した元春は再び過去へ戻ることを決意。小池(生瀬勝久)のもとを訪れ、過去へのタイムスリップを試みるシーンで第10話は終了した。

 一方で澪が母・久恵(片平なぎさ)から「誰でも取り戻したい過去がある」と言われながら500円硬貨を渡されたほか、車を運転するシーンもあったことから、元春とのダブルタイムスリップは間違いないだろう。

 第1話の段階では「夫婦ゲンカがつらすぎて見るのをやめた」という声も少なくなかったが、現在ではそんな人々を後悔させ、見続けてきた人々を感動させるハッピーエンドのムードが漂っている。「最終話は近年の中でも最高クラスのハッピーエンドが見られるかもしれない」、そう思わせる2つの理由を挙げていく。

2人の関係性を動かしてきたのは澪

 最終話では、元春が澪と出会い、沙也佳とデートする予定だった10年前の日にタイムスリップし、家から一歩も出ずに過ごしたあと、現在へ戻る様子が予告されている。さらに、元春が目覚めると、大阪で別の仕事をしながら独身生活を送っていた。しかも携帯の連絡先には澪、沙也佳、津山の名前がなく、あらためて一人で生きていくことを決意するが、ある日仕事で東京出張することになり、そこで「予想もしない事態が巻き起こる」という。

 やはり最終話の鍵を握るのは澪であり、演じる広瀬アリス。序盤から澪とアリスは、恋にときめく女子高生・女子大生、夫を罵倒するモンスター妻、仕事に前向きなワーキングウーマンという3つの姿を見せて物語をグイグイ引っ張ってきた。第10話でも澪は元春を呼び出して真相を尋ね、初デートの場所に連れ出し、「本当に私に悪いと思っているなら私と一緒にいてください」「ずっと一緒にいる。絶対離れない!」と繰り返し語りかける熱さを見せていた。

 一方の元春は「俺のせいでみんな不幸になる」とウジウジするばかりで、今の彼ではハッピーエンドを手繰り寄せられないだろう。「2人の結末は澪の奮闘1つにかかっている」と言っても過言ではない。

 もともと2人の関係性は、ほとんど澪からの発信によって動いてきた。まず澪の猛アプローチによって恋人同士になり、結婚して2児を産む。その後、澪がモンスター化したことで、元春に妻を入れ替えられてしまう。しかし、澪は自ら異動希望を出したことで元春と出会い、彼に惹かれ始めて告白する。澪は真相を尋ね、自分を避ける元春を懸命に追いかけて……と、常に澪が2人の関係性を動かしてきたことがわかるだろう。

モンスター化の原因は元春だけではない

 また、は夫婦関係が破綻した理由について、「ずっといろいろ支えてくれたのに、それが当たり前になって感謝の気持ちがなくなったのかもしれない」「家事と育児が大変なとき、『どうしてほしいか』ちゃんと伝えなかったのかもしれない」と自らの非を挙げた上で、「『絶対どちらか一方が悪いなんてことない』と思います」と元春に告げた。

 これまで当作は、「澪をモンスター化したのは元春」という一方的な描き方だったが、これらのセリフによって「夫婦どちらにも破綻の原因があった」という双方向に激変。これは一般の夫婦にもあてはまる真理であり、それを導き出したのも、やはり澪だった。

 だからこそ第10話で澪のタイムスリップをチラつかせたのは、「最後も澪がハッピーエンドに導く」というフラグにほかならず、これが1つ目の理由となる。

「絶対にあきらめない」と迫る澪と、「俺と結婚したら不幸になる」と拒む元春のせめぎ合いは、どういう形で決着するのか。ハッピーエンドなら、再び2人の子どもが見られるほか、「ともに働き、ともに子育てに励む」など、理想の夫婦像が見られるだろう。

 そのほかでは、元春のタイムスリップに振り回される形になった津山(松下洸平)と沙也佳にも、同等レベルのハッピーエンドが期待される。津山はかつてのように双子の父に戻れるのか。沙也佳と彼女に寄り添う上原(小関裕太)の幸せな結末はあるのか。あおい銀行世田谷支店のメンバーも含め、愛すべきキャラクターたちが笑顔を見せるエンディングの予感が漂っている。

ファンタジーとハッピーエンドはセット

 2つ目の理由は、タイムスリップファンタジーにおけるハッピーエンドの鉄則。以下に主な作品を挙げていこう。

 昨年放送された『テセウスの船』(TBS系)のラストシーンは、心(竹内涼真)が由紀(上野樹里)を両親の文吾(鈴木亮平)と和子(榮倉奈々)、姉の鈴(貫地谷しほり)と兄の慎吾(澤部佑)に紹介するという家族の幸せな姿で終了した。

 また、昨年再放送された『JIN-仁-』(TBS系)も、仁(大沢たかお)は歴史を大きく変えることなく現代に戻ることに成功。さらに、時間と記憶を超えて咲(綾瀬はるか)と思いがつながる最後のシーンが感動を誘った。

 同じく昨年再放送された『アシガール』(NHK)も、唯(黒島結菜)と若君(伊藤健太郎)の結婚が認められ、唯は「若君の命を守り抜く」ことを誓い、若君も「わしは二度と戦のない国をつくる。これからはわしがお前を守る」と誓って終了した。

 11日に最終話が放送された『江戸モアゼル~令和で恋、いたしんす。』(読売テレビ・日本テレビ系)も、仙夏(岡田結実)と蔵地(葉山奨之)、泉美(吉谷彩子)と鳥居(前田公輝)、寿乃(山口まゆ)と長兵衛(一ノ瀬颯)のカップル3組がハッピーエンドだった。

 そのほか、『プロポーズ大作戦』(フジテレビ系)、『流星ワゴン』(TBS系)なども絵に描いたようなハッピーエンド。

 そもそもタイムスリップに限らず「ファンタジー作はハッピーエンドとセット」という要素がある。言わば、「禁じ手」「何でもアリ」に近い設定なのだから、それを使えるのに、わざわざ不幸な結末を見せる必然性は皆無なのだ。夫婦という多くの人々が自分に投影させやすいテーマを扱った『知ってるワイフ』なら、なおのこと。不幸な結末を見せて、後味の悪さを感じさせることはあり得ないだろう。

(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。