“決定打”となったのは、あの敗戦か……。
11日、佐賀競馬場で行われた佐賀記念(G3)は、クリンチャー(牡7歳、栗東・宮本博厩舎)が断然の1番人気に応え優勝。9馬身差をつけた圧勝劇は、従来のコースレコードを0.7秒上回った。
佐賀競馬場ダート2000mで行われたレースは、勝ち時計「2.05.0」での決着。これまでのレコードタイムは2012年にピイラニハイウェイが記録した「2.05.7」で、ダートが湿った状態の不良馬場だった。
今回がパサパサの良馬場だったことを考えれば破格のタイムで、2~4着馬のタイムが昨年の勝ち馬ナムラカメタローの「2.06.7」と同じだったことからも、クリンチャーのパフォーマンスがいかに衝撃的かわかるだろう。
騎乗したのは川田騎手で、2走前のみやこS(G3)も3馬身差で快勝。同馬とのコンビでは、これで2戦2勝と相性の良さを示している。
みやこSでは、好位に取り付いたクリンチャーが早めにスパートする積極果敢な競馬を見せ、2着馬に3馬身、3着馬には7馬身差をつける快勝。鞍上の川田将雅騎手が「この馬の特長を活かそうというレースを選択しました」と語った通り、持久力勝負に持ち込んでの勝利となったが、これにはクリンチャー陣営も「とても熱心に、この馬のことを研究してくれた」と川田騎手を称賛した。しかし、続くチャンピオンズCでは川田騎手がクリソベリルへの騎乗が決まっていたため乗り替わりとなった。
そこで宮本博調教師が「前走が理想的。あれをイメージして乗ってもらうように伝える」と“バトン”を託したのが三浦皇成騎手である。
チャンピオンズCに出走したクリンチャーは、G1未勝利ながらも5番人気。前述のみやこS勝利により、大きな期待を背負っていた。
上位人気は3歳のカフェファラオ以外、G1優勝経験のある強豪がズラリと並んだ豪華メンバー。インティやモズアスコットといったフェブラリーS(G1)勝ち馬に至っては10番人気、11番人気だったのだから、クリンチャーの評価がいかに高かったのかがわかる。
しかし、レースでは川田騎手とは打って変わって、三浦騎手は1コーナーを11番手で通過するなど後方からの瞬発力勝負を選択……最後の直線では進路を探して右往左往するシーンも見られ、不完全燃焼のまま11着でレースを終えた。
「川田騎手が『返し馬で乗って「やはり瞬発力ではない」と感じた』と話していましたし、みやこSのようなスタミナ勝負に持ち込みたかった陣営からすれば、三浦騎手が選択した瞬発力勝負の競馬ぶりには、なかなか納得できなかったでしょうね」(競馬記者)
そんな経緯もあってか、三浦騎手はそれ以降、クリンチャーどころか宮本厩舎の所属馬にさえ騎乗していない。
その一方で、川田騎手に手綱が戻ったクリンチャーは、この日の佐賀記念で当然のように逃げて持久力勝負を選択。結果は9馬身差をつけてのレコード勝ちなのだから、ファンや関係者が「チャンピオンズCでこの競馬が見たかった」と考えるのは当然だろう。
今回の勝利で、地方含むG1制覇が視野に入ってきたクリンチャー。未だにJRAでのG1勝利がない三浦騎手にとって、逃した魚は大きかったかもしれない。