有馬記念(G1)武豊「ウイニングラン」も残酷な結末! スペシャルウィーク、グラスワンダーが激突した1999年…… 最強世代の意地を懸けたラストバトル

 27日、中山競馬場では暮れのグランプリ・有馬記念(G1)が行われる。1年の締めくくりに位置する大一番はこれまで幾多の名勝負を繰り返して来た。

 オグリキャップ感動のラストランをはじめ、1年ぶりに出走したトウカイテイオー奇跡のラストランなど、競馬場へ詰めかけたファンに感動を与えたに違いない。

 中でも今回は武豊スペシャルウィークと的場均グラスワンダーが死闘を繰り広げた1999年に思いを馳せてみたい。

 この2頭はいずれも俗にいう「98世代」の馬だ。例年話題となる世代レベルにおいて、G1・勝利数はひとつの目安となる。他世代相手により多くのG1を勝つことで、イコール世代レベルが高いと評価されやすい。

 また、前述の2頭以外にも凱旋門賞(G1)に挑戦したエルコンドルパサー、クラシック2冠馬セイウンスカイ、エアジハード、キングヘイローなどの個性豊かなライバルたちも競馬史に残る活躍を見せた名馬である。

 話は戻るが、スペシャルウィークとグラスワンダーは有馬記念が二度目の対決でもあった。初めて顔を合わせたのは宝塚記念(G1)だった。横綱相撲で先頭に立ったスペシャルウィークを楽な手応えで交わし去るグラスワンダー。接戦どころかゴールでは3馬身という決定的な大差をつけて、グラスワンダーが一蹴したのである。

 現役最強と信じていた馬の完敗は武豊騎手の作戦に大きな変化をもたらした。2度目の対決とはいえ、翌年も現役続行するグラスワンダーに対し、有馬記念で引退が決まっていたスペシャルウィークにとって最後となるリベンジの舞台でもあった。

 14頭立てのレースで2枠3番のスペシャルウィークと4枠7番のグラスワンダー。宝塚記念の屈辱を晴らすべく武豊騎手が用意した秘策はライバルへの徹底したマークだった。ゴーイングスズカが逃げたものの、ペースは超スロー。後方4番手のグラスワンダーに対し、スペシャルウィークは意外にも最後方からの競馬を選択した。

「先に動いた方が負ける」宝塚記念とは真逆の戦法でライバルの一挙手一投足に注目する。スローで前の馬が楽をしていることを警戒したグラスワンダー的場騎手が先に動いた。これに呼応するかのように武豊騎手スペシャルウィークも進出。やはり直線では2頭の一騎打ちが展開された。

 先に抜け出したグラスワンダーを、外からスペシャルウィークが猛然と追い詰めたところがゴール。グラスワンダーが残したのか、それとも完全に脚色で上回ったスペシャルウィークが捉えたのか。あまりにも際ど過ぎる結果は、写真判定へと持ち越された。

 それぞれの鞍上の表情は異なっていた。笑顔でガッツポーズを何度も繰り返した武豊騎手と敗戦を覚悟したかのような重い表情の的場騎手。勝利を確信した武豊騎手はウイニングランで歓声に応え、ファンからは「ユタカコール」も聞こえ始めた。

 しかし、写真判定の結果、ゴールの瞬間だけグラスワンダーがハナ差で凌いでおり、スペシャルウィークはまたしても2着に敗れてしまった。同着にしてもいいのではといった声も出た名勝負。勝者と敗者に分かれてしまったのは残酷かもしれない。

 勝ち時計2分37秒2という遅さも、2頭がいかに抜けた存在だったのかを示している。同日のグッドラックハンデ(2勝クラス・芝2500m)は同じ距離で2分35秒8と、G1の有馬記念より1秒4も速い決着だった。そんな超スローながらも後方からまくった2頭が一騎打ちを演じたのだ。

 圧倒的に前にいる馬が有利な展開ながらも、まるで2頭以外出走していなかったかのようなマッチレースを繰り広げたことにも驚かされる。

 しかも、3着馬は翌年から無敵の快進撃をするあのテイエムオペラオーでもあった。後の7冠馬ですら、このときは脇役の1頭に過ぎなかった。