JRA「幻の3強」ラッキーライラックを超えた打倒アーモンドアイ筆頭。無念の引退から2年……今もファンから惜しむ声

 史上最多の9冠・最強女王アーモンドアイの「最大のライバルは?」と聞かれて、最も多くの名が挙がるのは、おそらく同世代のラッキーライラックだろう。

 これまで阪神ジュベナイルF(G1)に大阪杯(G1)、エリザベス女王杯(G1)連覇と、もしアーモンドアイがいなければ、さらに大きな評価を得ていたかもしれない名牝中の名牝だ。

 しかし、そんなラッキーライラックも27日の有馬記念(G1)がラストラン。結局アーモンドアイとは、3歳秋の秋華賞(G1)以来、一度も顔を合わせることなく引退となった。

 そんな中、今になってもファンから「あの馬がいれば……」と不在が惜しまれている馬がいる。同世代のリリーノーブル(栗東・藤岡健一厩舎)だ。

 実は、アーモンドアイとラッキーライラックが主役を務めた2018年春の牝馬クラシック戦線は2強ではなく、「3強」だった。

 開幕戦の桜花賞(G1)。1番人気はラッキーライラックだった。デビューから4戦4勝の2歳女王。王道トライアルのチューリップ賞(G2)も完勝し、単勝1.8倍は当然の評価だったと言えるだろう。

 一方のアーモンドアイはデビュー戦で躓いたこともあって、牝馬クラシック戦線の中ではまだ新参者だった。

 しかし、前走のシンザン記念(G3)で見せたパフォーマンスは、レースを見た多くのファンを“一目惚れ”させる強烈なインパクトだったこともあっての2番人気。イメージとしては、今年の桜花賞を迎えた当初のデアリングタクトが近い存在と言えるかもしれない。

 結果はこの2頭がワン・ツーを飾り、アーモンドアイが高らかと「政権交代」を告げたのだが、2着ラッキーライラックに半馬身差の3着に食い下がったのが、リリーノーブルだった。

 2歳秋の新馬戦快勝後、2戦目となった白菊賞(1勝クラス)で、今年のマイルCS(G1)4着馬スカーレットカラーを撃破したリリーノーブルは、その勢いのまま阪神JFへ。勝ったラッキーライラックと3/4馬身差に迫る2着で、その名を一気に知らしめた。

 その後チューリップ賞3着、桜花賞3着とラッキーライラックに連敗するも、本馬が「3強」に名を連ねる要因になったのが、オークス(G1)での力走だ。

「枠を活かしてスムースな競馬が出来ました。最後までよく伸びていますが、勝った馬が強かったです」

 レース後、主戦の川田将雅騎手がそう語った通り、1枠1番からスタートしたリリーノーブルは卒なく好位の3番手をキープすると、最後の直線では一時先頭に立つ乾坤一擲の走り。最後はアーモンドアイの鬼脚に屈したが、宿敵ラッキーライラックに1馬身3/4差をつける2着は、この馬の評価を改めて高めるものだった。

 オークスを終え、牝馬三冠に王手をかけたアーモンドアイの逆転候補筆頭に立ったリリーノーブル。しかし、レース後に右前第1指骨の剥離骨折が判明……当初、秋には復帰できる見込みだったが、休養中に左前脚の球節部に腫れが出たことで無念の引退となった。

「デビュー戦の馬体重が502kgと非常に大きな馬だったこともあって、陣営は脚に負担を掛かり過ぎないよう細心の注意を払っていたと聞きます。引退の直接的な原因となった球節部の腫れも、腫れ自体が問題というよりは、腫れを抑えながら馬体を絞る調整が難しいとのこと。

世代トップクラスの力を持っていたことは明らかですし、アーモンドアイやラッキーライラックが活躍すればするほど『この馬が無事だったら』と嘆くファンの声は、今でも多く聞かれますね」(競馬記者)

 いわゆる「アーモンドアイ世代」の牝馬は、つい先日もノームコアが香港Cを制したばかり。今年の高松宮記念(G1)を勝ったモズスーパーフレアも同世代と、2020年の競馬を鮮やかに彩った世代だ。

 もしリリーノーブルが今も健在だったら、歴史的一戦となったジャパンCで再びアーモンドアイに迫っていたか……それとも有馬記念でラッキーライラックと共にラストランを迎えていたかもしれない。

 競馬にタラレバは禁句だが「無事之名馬」とは、言い得て妙である。