波瑠×朝ドラ脚本家の『#リモラブ』が低迷する3つの理由…タイトルは戦略ミス?

 これほどコロナ禍を真っ向から扱った連ドラはなく、しかも「ネット上の反応が大きい」と言われるラブストーリー。例年以上に恋愛ドラマが揃った2020年秋ドラマの中でも、『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)に対する期待値は高かった。

 しかし、ここまでの世帯視聴率は7~8%台、個人視聴率は3~4%台。及第点とされる世帯視聴率10%、個人視聴率6%にはほど遠い結果しか得られないばかりか、あまり話題になっていないところに苦しさがうかがえる。

 ここ5年間で最も連ドラの主演を務めてきたトップ女優の波瑠と、朝ドラ『スカーレット』(NHK)を手がけたばかりの脚本家・水橋文美江。タイムリーかつアグレッシブなテーマに万全の布陣で挑んだにも関わらず、ここまで思ったような結果を得られていないのはなぜなのか。それを掘り下げていくと、同作の恋模様が盛り上がりにくい3つの理由が浮かび上がってきた。

コロナ禍らしい恋模様は見られず

 ひとつ目の理由は、コロナ禍とラブストーリーが分離していること。

 第1話は今年4月からスタート。マスクや手洗いが必須となり、リモートワークが導入され、緊急事態宣言が発令されて、孤独を感じてしまうなど、リアリティのある展開が見られた。実際、「ヒロインの大桜美々(波瑠)がなぜ恋をしたくなったのか」を描く序盤を見た視聴者から共感の声が上がるなど、「上々のスタートを切った」と言っていいだろう。

 美々はストレス解消のために勧められたオンラインゲームで「草モチ」と名乗り、「檸檬」とコミュニケーションを取るようになり、そのやり取りに癒されたことから恋心を募らせていった。この流れも『#リモラブ』というタイトルにふさわしく、問題はなさそうだ。

 さらに美々は「檸檬」が同じ会社の社員・青林風一(松下洸平)であることに気づき、戸惑いながらも自分が「草モチ」であることを伝えようとするが、「健康管理室の独裁者」と言われる嫌われ者のため、なかなか切り出せない。11月18日放送の第6話では、ついに美々が自分の正体を青林に伝えるが、拒絶されてしまい……という展開が予定されている。

 いかにも水橋文美江らしい丁寧なストーリーテリングである一方、「コロナ禍の恋愛」というテーマは序盤だけでほぼ消滅してしまった。終始マスク姿であり、ソーシャル・ディスタンスを保とうとする様子こそあるものの、それが恋模様とはからんでこない。唯一の例外は、青林と恋人だった我孫子沙織(川栄李奈)がマスク同士のキスをしたことくらいだった。

 美々と青林はコロナ禍の中、普通にメッセージのやり取りをしているだけだが、現在このような恋をしている男女はどれだけいるのだろうか。現在進行形のコロナ禍を真っ向から扱っておきながら、今世の中で育まれている恋のリアルはなし。コロナ禍の恋愛を取材し、脚本・演出を練り上げる時間が足りなかったのかもしれないが、「これがリモラブ?」という消化不良があり、世間の関心を集められない理由となっている。

三角関係が不発でドキドキが足りない

 2つ目の理由は、ヒロインの相手役となる男性キャラたちの魅力が欠けていること。

 ラブストーリーのメイン視聴者である女性層をつかむためには、複数の魅力的な男性を用意するのがセオリーであり、その点では当作も抜かりないはずだった。

 制作サイドは、松下洸平が演じる「ダサく冴えない人事部員」青林に加えて、間宮祥太朗が演じる「甘やかされて育ち、退社を考える人事部員」五文字順太郎、及川光博が演じる「明るくラテンな人事部長」朝鳴肇、ジャニーズJr.・高橋優斗が演じる「社交的でお調子者の新人看護師」八木原大輝、渡辺大が演じる「やり手で美々とぶつかる営業部員」岬恒雄という、年代も性格も異なる5人をラインナップ。

 同作は放送前に、「美々(波瑠)の“恋の容疑者”は誰?ヒントを公開!」というトピックスをつくってメディアに報じさせ、「5人の誰がどれだけヒロインの恋にからむのか」という期待感を抱かせていた。

 しかし、美々と五文字の恋が軽く描かれただけで、すぐに美々と青林のマンツーマンにあっさり移行。三角関係や四角関係で揺れ動くことがないため、ラブストーリーにつきものである「誰と誰がつき合うのか? それとも離れるのか?」をめぐるドキドキの絶対量が足りていない。

 また、ヒロイン以外の恋模様を描くシーンが少ないことも、当作がネット上で盛り上がらない原因となっている。事実、女性視聴者たちは自分の支持する男性キャラクターを見つけられず、「私はどちら派」「いや、私は○○の方が好き」などの盛り上がりはほとんど見られない。

 中盤から終盤にかけて、小悪魔タイプの営業部員・我孫子沙織、八木原と交際中の乙牧栞(福地桃子)、結婚願望のない精神科医・富近ゆり(江口のりこ)の登場シーンを増やすほか、新たな女性キャラを投入するなどの活性化が必要ではないか。

タイトルは制作サイドの戦略ミスか

 3つ目の理由は、時流に合わないドラマタイトル。

#リモラブ ~普通の恋は邪道~』と聞いてピンとくる人はどれだけいるだろうか。現在の視聴者は、「『リモラブ』って何だろう」と考える前に無関心のままで終えてしまうなど、わかりにくいものに対するスルー傾向が強い。

 制作サイドとしては「リモラブ」という耳慣れない言葉を新たに流行らせたかったのかもしれないが、そんな誘導的なアプローチは視聴者に嫌われてしまうもの。そもそも「リモラブ」は「リモートラブ」を略したものだが、このアプローチがミスだったのではないか。

 近年のドラマタイトルは、長いものを略して読んでもらうのが基本。とりわけラブストーリーは、『逃げるは恥だが役に立つ』を「逃げ恥」、『初めて恋をした日に読む話』を「はじこい」、『恋はつづくよどこまでも』を「恋つづ」、『私の家政夫ナギサさん』を「わたなぎ」と呼んで親しまれていた。

 制作サイドが「リモラブ」と略してしまったものは、それ以上親しみを込めて呼ばれにくいのだ。また、「#」をつけたことで、SNSで使わない人々を排除してしまったことも悔やまれる。

 とはいえ、クオリティが低いわけではなく、ラブストーリーが好きな人はそれなりに楽しめる作品だろう。「コロナ禍の恋」というテーマを忘れ、美々と青林の純愛を楽しむことに徹したら、最後まで見て損はないはずだ。

(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。