テレビ東京系で月曜夜10時から放送されている『共演NG』は、タイトルの通り、共演NGの俳優たちが一堂に会したドラマの撮影の内幕を描いたテレビドラマだ。
大物俳優の遠山英二(中井貴一)と大物女優の大園瞳(鈴木京香)は過去に恋人同士だったが、遠山が二股をかけたことが原因で破局となり、それ以来、2人は共演NGとなっていた。しかし“テレビ東洋”の社運をかけたドラマ『殺したいほど愛してる』のW主演に抜擢されたことで、25年ぶりに再会を果たす。
遠山と大園の他にも、大御所時代劇俳優の出島徹太郎(里見浩太朗)、過去に出島の付き人だったが、喧嘩別れした後、ニューヨークで演技の勉強をした個性派俳優の小松慎吾(堀部圭亮)、元アイドル出身の女優・篠塚美里(若月佑美)、かつて篠塚が在籍したアイドルグループ所属でドラマ出演は初めての内田梢(小野花梨)、戦隊ヒーローモノ出身の佐久間純(細田善彦)、佐久間とキャラが被っている(アニメや漫画を舞台化した)2.5次元ミュージカルで人気の俳優・加地佑介(小澤廉)といった共演NGの俳優たちが一堂に会する撮影現場はトラブルの連続。
撮影を成立させるために遠山と大園が右往左往する一方、ドラマをヒットさせるために番組スタッフたちが悪戦苦闘する姿が、劇中で描かれる。
ショーランナー・市原は秋元康の分身か
企画・原作は秋元康。『モテキ』(テレビ東京系)の大根仁が、全話の演出と脚本(樋口卓治と共同)を務めている。観ていてどこかなつかしいのは、1980年代にフジテレビがたくさんつくっていた業界ドラマを思い出すからだろう。同時に、プロデューサーにフジテレビ系列の制作プロダクション・FCCの浅野澄美が参加していることもあってか、2012年に浅野がプロデュースした中井貴一と小泉今日子が主演を務めたドラマ『最後から二番目の恋』(フジテレビ系)を彷彿とさせる。
それにしても、かつてフジが牽引していた業界ドラマをテレ東でつくっていることに時代の変化を感じる。『共演NG』が放送されている月曜夜10時枠は、テレ東の中でも視聴率が安定しないドラマ枠だ。最初に放送されたのは10~11年。当時、この枠で放送された『モリのアサガオ 新人刑務官と或る死刑囚「絆」の物語』や『鈴木先生』は、玄人受けはしたものの視聴率は苦戦し、一度このドラマ枠は終了している。
18年に「ドラマBiz」というビジネスドラマ枠として再スタートしたが、今年の春クールに放送された『行列の女神~らーめん才遊記~』で終了。今回の『共演NG』は三度目のリニューアル。そこに『あなたの番です』(日本テレビ系)をヒットさせた秋元康の企画をぶつけ、『モテキ』を筆頭とするテレ東の深夜ドラマで数々のヒット作を生み出してきた大根仁を脚本・演出に起用するということは、それだけテレ東にとって勝負作ということだろう。
このテレ東が『共演NG』にかける意気込みと、劇中でテレビ東洋が『殺したいほど愛してる』をヒットさせたいという意気込みがシンクロしていることが、本作の隠れた魅力である。おそらく、共演NGの俳優を話題作りのために起用するショーランナー(制作統括、脚本)の市原龍(斎藤工)は秋元康の分身なのだろう。
テレ東が描く「ドラマ作りのドラマ」
劇中ではドラマのスタッフが「深夜はありだけど、ぶっちゃけそんな数字も取れてないし」と言ったり、次にコケたらドラマ枠自体がなくなるという話が出てくるのだが、こういった虚実入り交じった場面には本編の恋愛ドラマとは違うおもしろさがある、また、番宣のためにテレ東の人気バラエティ『池の水ぜんぶ抜く』に出てもらえないか? と大園の事務所が相談される場面も登場する。
『最後から二番目の恋』も、本編の恋愛ドラマと同時進行で主人公のドラマプロデューサーが恋愛ドラマを制作していく過程が細かく描かれていたが、本作で撮影されるドラマ『殺したいほど愛してる』もディテールが細かい。番組ホームページも『共演NG』と別に用意されており、あらすじ紹介や人物相関図も丁寧につくられている。
また、第3話では、出演俳優の佐久間と篠塚が不倫関係にあることがスクープされ、謝罪会見に追い込まれる。遠山と大園が同席することになるのだが、マスコミから批判される2人をかばう形で遠山が「いつまで、こんなことを繰り返すんですか!」と憤る場面には、スキャンダルが起きるたびに謝罪会見を開き、出演俳優の降板や動画配信・ソフト化の停止が続いているドラマ業界の現状に対する、作り手自身による異議申し立てに見えた。
劇中では番組スタッフがマスクを着用しており、記者会見やドラマ撮影の場面はコロナ禍を踏まえた描写となっている。大人のラブコメの中に、大根たち作り手のメッセージが込められた「ドラマ作りのドラマ」だと言えよう。
ちなみに、第3話で登場した『殺したいほど愛してる』の初回平均視聴率は6.6%。これは『共演NG』の初回視聴率(ビデオリサーチ社、関東地区)と同じ数字である。
(文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家)