25日、いよいよ大一番を迎える菊花賞(G1)。
ヴァルコス(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)への騎乗を予定していた三浦皇成騎手が病気のため、岩田康誠騎手へと乗り替わる事がJRAより発表された。
岩田騎手の菊花賞と言えば、やはり思い出されるのはデルタブルースだろう。
2004年の菊花賞、デルタブルースは大外18番からのスタートだった。道中は外目を追走する形で前方に位置取り、折り合いに専念した岩田騎手。2週目の3コーナー手前で後ろを振り返ると、一気にレースを動かしにかかった。3コーナーから一気にまくり上げると、直線では残り300mで早くもコスモバルクに並びかけ先頭へ。その後も勢いが衰える事はなく、内から突っ込んだホオキパウェーブを1馬身1/4凌いで快勝した。
レース後のインタビューで岩田騎手は「なにがなんだか自分でもわからない状態」と、JRAでの初G1勝利に興奮。デルタブルースについては「精神的にも大人になって、ステイヤーの血が騒ぎ始めたのかなと思います」と述べた。
「先生が最初の3、4コーナー、最後の3、4コーナーをいかに気持ちよく通過できたら、この馬の持ち味は発揮できるとおっしゃってたんで、早め早めの競馬を心掛けました」と話したように、2週目3コーナーから仕掛ける完璧な競馬。この時点で岩田騎手は兵庫県競馬(園田)所属のジョッキーであったが、地方競馬所属の騎手としては初めて中央競馬のクラシックを制覇する事となった。
デルタブルースを管理した角居勝彦調教師は『NEWSポストセブン』(小学館)にて、岩田騎手を起用した経緯を「それほど人気もなかった(8番人気)し、有力騎手には先約がありました。ズブい馬だったので長い距離をずっと追える騎手がいないかと探したとき、当時まだ地方競馬所属だった岩田康誠騎手のことを知りました」と語っている。
また「格上挑戦でしたが会心の勝利です。馬の良さを引き出してくれたし。京都の長い距離を、がっちり追ってくれました」と岩田騎手を絶賛。これが、角居調教師にとってもJRAでのG1初制覇となった。
今回、岩田騎手が騎乗するヴァルコスは、過去にスミヨン騎手が騎乗した事もあるが「思っていたよりもいいポジションは取れたが、かなりズブかった。4角から止まりかけたけど、最後はまた伸びてくれたようにスタミナは十分」とコメントしている。
まさにデルタブルースのような馬だが、この2頭には「共通点」が……。
デルタブルースの父、ヴァルコスの母父がともにダンスインザダーク。菊花賞を得意とする血統なのである。
2年前の菊花賞で10番人気ながら3着に入線したユーキャンスマイルも、ヴァルコスと同じく母父がダンスインザダーク。遡ればスリーロールス(8番人気)とフォゲッタブル(7番人気)のワンツーで決まった2009年、ザッツザプレンティの勝った2003年(5番人気)、ヒシミラクルが勝利して大荒れとなった2002年も2着ファストタテヤマ(16番人気)がダンスインザダーク産駒であった。
今回の菊花賞には角居厩舎のアイアンバローズも特別登録をしていたが、収得賞金900万円で非抽選除外。出走が叶えば騎乗する予定だったのが、岩田騎手である。
急遽として騎手変更が決定したヴァルコス。本馬を所有する佐々木主浩氏が、JRA所属ジョッキーで過去にJRAでのG1騎乗を依頼しているのが、福永祐一騎手、内田博幸騎手、C.ルメール騎手、それと三浦騎手、岩田騎手である。
福永騎手は偉業の懸かるコントレイル騎乗、内田博騎手は4連勝で打倒コントレイルに燃えるバビット騎乗、C.ルメール騎手が騎乗するアリストテレスもしっかりと抽選に通った。
佐々木氏のお抱え騎手で唯一騎乗馬がいなかったのが岩田騎手。三浦騎手が乗れなくなった時点で、この選択は「必然」だったのかもしれない。
岩田騎手にとっては「偶然」にも得たヴァルコスへの騎乗チャンス――。
“会心の勝利”は、ステイヤーの血が騒ぎ始めるかに懸かっていそうだ。