25日、京都競馬場では菊花賞(G1)が行われる。3歳クラシックの掉尾を飾る最終関門に3冠を狙うコントレイル(牡3、栗東・矢作芳人厩舎)が挑む。
前哨戦となる神戸新聞杯(G2)を危なげのないレースで優勝したように、同世代にライバルはいない。15年前、父であるディープインパクトが達成して以来となる無敗3冠に向け、盤石の態勢といえるだろう。
また、先週は秋華賞(G1)を制したデアリングタクトが、史上初の牝馬無敗3冠を達成しただけに、コントレイルもこれに続きたいところだ。
馬にほぼ問題がないとなると、注目されるのが主戦の福永祐一騎手である。コントレイルに対し、やっと巡り会えたスターホースと最大級の評価をし、大一番を前にプレッシャーどころか「待ち遠しい」と言ってのけたのは頼もしい限り。
だが、あえて自らを鼓舞するような強気な言葉とは裏腹に、これまで幾多の壁に跳ね返されて来たことも確かだ。
福永騎手は自身の初G1勝利となった1999年プリモディーネの桜花賞(G1)をはじめ、それ以外も牝馬限定G1すべてに優勝経験がある。「牝馬の福永」といわれるように得意にしている条件である。
その一方、牡馬に関してはスプリント戦やマイル戦に好相性を誇りながら、王道とされる中距離以上のレースで善戦まではするものの、勝ち切れない競馬が続いた。これは当時の福永騎手にとっても大きな「重圧」となったであろうことは想像に難くない。
そんな福永騎手をこのコンプレックスから解き放ってくれたのが、2013年の菊花賞馬エピファネイアとの出会いだ。デビューからコンビを組みホープフルS(G1)の前身であるラジオNIKKEI杯2歳Sまで無敗の3連勝はコントレイルと重なるところもある。
しかし、福永騎手が前週に騎乗停止となったため、エピファネイアはW.ビュイック騎手と挑んだ翌年の弥生賞(G2)を4着に敗れると、皐月賞(G1)はロゴタイプ、日本ダービー(G1)はキズナの前に2着に敗れた。ダービーのゴール前、外から伸びて来たキズナに福永騎手がうなだれた姿には哀愁さえ漂っていたかもしれない。
だが、秋には条件が好転する。ダービー馬キズナは凱旋門賞挑戦、皐月賞馬ロゴタイプは距離適性を考慮して菊花賞には向かわず、エピファネイア1強の条件が整った。神戸新聞杯を楽勝して迎えた最後の1冠・菊花賞でファンも1.6倍に支持した。
バンデが逃げる流れを3番手から折り合いに専念、満を持して直線を迎えるとそこから後続との差は広がるばかり、2着馬に5馬身の差をつけて悠々ゴールした。レース後、福永騎手は「最後はノーステッキで完璧なレースが出来たと思います」と会心の騎乗を振り返った。
すでに神戸新聞杯を優勝した際に「めちゃめちゃ嬉しいです。やっと乗りこなすことができました」と、本番に向けて確かな自信を手に入れていたことも、冷静な手綱捌きを後押ししたのだろう。
この勝利により待望の牡馬クラシック初勝利を手に入れた福永騎手は、勢いそのままに翌週の天皇賞・秋(G1)ジャスタウェイで優勝。それまで未勝利だった古馬の中距離G1の壁をも乗り越えた。
「過去には主戦だった後の2冠馬ネオユニヴァースではなく、エイシンチャンプとクラシックに挑み、結果的に勝つことが出来なかった不運もありました。エピファネイアで菊花賞を勝つまで牝馬でしかクラシックを勝てなかったことは、福永騎手にとってもコンプレックスだったのではないでしょうか。
ですが、この勝利をきっかけに、中長距離のG1でも勝負強さに磨きが掛かったことは確かです。京都の長距離G1である菊花賞、天皇賞・春で人気薄を持って来ることも珍しくなくなりました。かつては頼りないところもありましたが、今の福永騎手なら陣営も安心してコントレイルを任せられるでしょう」(競馬記者)
天才騎手といわれた偉大な父、福永洋一氏も成し得なかったダービージョッキーの称号を手にした福永騎手。父や武豊騎手が天才ならば、福永騎手もまた努力の天才といえる。
挫折を乗り越え、ようやく巡り会えたスターホースと偉業に臨む今週末は、騎手人生の集大成となるのではないか。
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