『MIU404』絶賛ムードに抱く違和感の正体…“毎週見逃せない”『半沢直樹』との違い

 世帯視聴率は手堅く10~12%あたりをキープ(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。ネット上のコメントを見ても絶賛の声が目立ち、批判の声はめったに見かけない。

 同じTBSが放送している『半沢直樹』ほどの派手さはないが、“それなりのヒット作”となっている『MIU404』(TBS系)。

 ただ、当初から絶賛ばかりで極端に批判が少ないことに違和感を抱き、その思いは週を追うごとに増していった。“それなりのヒット作”となっていることこそが、違和感の正体だったのだ。

バリエーションの豊富さは諸刃の剣

『MIU404』は警視庁機動捜査隊(通称・機捜)が「24時間」というタイムリミットの中で犯人逮捕に挑む一話完結の物語だが、ここまで絶賛の理由となっているのは、主に「バリエーション豊富なストーリー」と「魅力的なバディ」の2点。

 まず各話のストーリーは、あおり運転、拉致監禁、イタズラ110番通報、1億円横領で逃亡、同時コンビニ強盗、バディの過去を救う、指名手配犯を追跡など、他の刑事ドラマと比べてもバリエーションに富んでいる。これは『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』らを手がけた脚本家・野木亜紀子によるもので、その力量を踏まえれば、当然のことかもしれない。実際ここまでは各話のテーマも、解決までの展開も、週替わりで違いを見せることで視聴者を引きつけてきた。

 しかし、野木のオリジナル作というだけで条件反射的に絶賛の声を上げるファンが多い一方、そうでない人は「先週はあれだったから今週はこんなのはどう?」という作り手の作為を過剰に感じて没頭しづらいところがある。「批判するほどではないけど、いまいち楽しめない」という人もいるのだ。『アンナチュラル』もそうだったが、バリエーションを見せるタイプのドラマは質の高低にかかわらず、作り手が思っている以上に見る人を選んでしまう。

 一方、伊吹藍(綾野剛)と志摩一未(星野源)を魅力的なバディに見せているのが、チーフ演出家の塚原あゆ子。『アンナチュラル』『中学聖日記』『グランメゾン東京』らを手がけた監督であり、対照的な性格の2人が本物のバディになっていく過程を躍動感たっぷりに映し出している。

 ただ、「機動力と運動神経はピカイチだが、刑事の常識に欠ける野生のバカ」と「観察眼と社交力に長けているものの、自分も他人も信用しない理性的な男」という組み合わせはド定番であり、その既視感こそが「絶賛ばかり」の違和感につながっている。「気鋭の脚本家と演出家の手がけるドラマが、何で今さらそんな使い古されたキャラクターなの?」と感じずにはいられない。

国民的ドラマにはなれない悲しさ

 では、絶賛の声が多いのに、批判がほとんどないのはなぜなのか? その答えは刑事ドラマというジャンルにある。

 刑事ドラマは現在、『刑事7人』『警視庁・捜査一課長2020』『未解決の女 警視庁文書捜査官』(いずれもテレビ朝日系)、『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)を含め、計5作が放送中。さらに今後も、『キワドい2人-K2-池袋署刑事課 神崎・黒木』(TBS系)、『DIVER-特殊潜入班-』(フジテレビ系)、『らせんの迷宮~DNA科学捜査~』(テレビ東京系)、そして『相棒』(テレビ朝日系)らの放送が予定されている。

 一年中、全体の3分の1程度から多いときは半分近くの割合で放送されているため、刑事ドラマであることを知った瞬間、「またか……」と失望してしまう人が少なくない。「刑事ドラマというだけで最初から見ない」という人が他ジャンルのドラマよりも多いため、必然的に放送後の批判は少なくなるのだ。

 見る前から刑事ドラマを選択肢から外す人の多さは、世帯視聴率が証明している。『MIU404』は絶賛の声を集めながらも、世帯視聴率は10~12%程度。その他の刑事ドラマでも、『半沢直樹』のような国民的ドラマや、『テセウスの船』『恋はつづくよどこまでも』(ともにTBS系)のような右肩上がりで支持を集めるヒット作が生まれることはない。

刑事ドラマで一番おもしろい『MIU404』

 もともと刑事ドラマが量産されているのは、「録画やネットでの視聴ではなく、リアルタイム視聴が多いジャンルのため、安定した視聴率を稼げる」「シリーズ化しやすい」という保守的なマーケティングによるもの。そのため、『MIU404』がどんなに絶賛の声を集めても、「量産される刑事ドラマの中で一番おもしろい」という範疇にとどまってしまうのだ。

 前述したように、最高レベルのスタッフをそろえれば刑事ドラマの中でトップになる可能性は高いのだが、これは裏を返せば、「同じスタッフが別のジャンルでつくれば、国民的ドラマになる可能性を秘めている」ことにほかならない。その点では、「これほどのスタッフを刑事ドラマの枠に押し込めてしまうのは実にもったいない」とも言える。

 新たに始まるのが刑事ドラマと知って、放送前から失望してしまう人がいるのも無理はない。刑事ドラマのほとんどが殺人事件を扱う捜査一課が舞台の作品であり、どんなにコミカルなシーンを挿入しても重苦しいムードをぬぐい去ることはできないからだ。そんな重苦しさのあるドラマを「若年層にも見てもらおう」というのは虫が良すぎる。

 また、刑事ドラマは基本的に一話完結型のため、『半沢直樹』『テセウスの船』『恋はつづくよどこまでも』のように、「回を追うごとに登場人物への思い入れが増す」「次回放送が楽しみで待ちきれない」という連ドラの醍醐味を感じさせることは難しい。多少乱暴な言い方になるが、一話完結型は「毎週どうしても見たい」ではなく、「見てもいいし、見なくてもいい」と思わせるタイプのドラマなのだ。

菅田将暉を超えるサプライズはあるか

 質こそ高いものの、良く言えば安定感がある、悪く言えば意外性がない……。そんな一話完結の刑事ドラマだからこそ、謎多き男・久住の役を演じる菅田将暉への期待感はおのずと高くなりつつある。ただ、この策も諸刃の剣であり、もったいぶるようにチラチラと登場させるシーンを続けるほど、興醒めさせてしまうかもしれない。

 野木の脚本なら終盤に向けて「最終回の結末が気になる」という連続性を感じさせてくれるだろうし、「実は全話を通じて壮大な伏線が張られていた」という大仕掛けへの期待も募る。菅田の出演がそうだったように、まだまだサプライズを散りばめているかもしれないし、ネット上の話題性を意識した策もあり得るだろう。

 絶賛の声が多いわりに好き嫌いの分かれる作品ではあるものの、最後まで刑事ドラマファンを中心に一定の盛り上がりを見せるはずだ。

(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。