10年ひと昔なんてことを申しまして、10年前は何があったかなんていうと、サッカーのワールドカップで日本が大盛りあがりして。大会前は調子が上がらず今回はダメと期待されていなかった分、予想を覆す快進撃でグループリーグ突破を達成した岡田JPAN。「本田△」なんていう流行語も生まれたのである。
流行語といえば、即興なぞかけを得意とするお笑い芸人の決め台詞「整いました」も流行ったのだが、今ここにきてまた「整う」という言葉が浸透しているのも不思議な縁である。どちらも「なぞかけ」と「サウナ」という地味で渋めなカテゴリーが注目されるのが興味深いところ。
この「地味」で「渋め」が人気を集めることがまれに発生するのだが、パチンコにおけるこの分野の第一人者が『J-RUSH』である。
アレパチを思わせる盤面構成。極小の表示領域。釘多数。よくわからないデザインのセル。見るからに現代パチンコの文脈から外れた異質な機種が、高年者層の圧倒的支持を受け2010年から2018年までの間にシリーズが第4弾までリリースされたのである。
シリーズを通して基本的なスタイルに一切の変化はなく、時々の規則によって多少のスペック的上下動が起こらざるを得なかったものの、通底するフィロソフィーはまったくぶれずに時代を進んでいった硬派なマシンといえよう。
同じように年配者に愛される『海物語』のようにシンプルで明快、それこそ輝く海のような陽気なイメージではなく、昭和のパチンコ然とした、いい意味でのいかがわしさや背徳感が漂う玄人好みの一台である。
本機は次回まで継続するループ確変でありながら、電サポ回数に制限があり、電サポが終了すると潜伏する仕様で、これが外面上の「怪しい連チャン」を生み出し、パチンコをディープに愛しているファンの嗜好に刺さるのである。
初代『J-RUSH』は大当り確率が1/284.9、確変突入率70%、電サポ88回のミドルタイプと大当り確率1/199.8、確変突入率70%、電サポ33回のライトミドルタイプが用意されているが、特にライトミドルタイプは電サポ抜けも多く、平場(内部的には確変だが)での早い段階での引き戻しが頻発するので、かつての連チャン機のような体験をトレースできるのである。
また、「リーチ管理システム」と呼ばれるリーチが頻発すると大当りが近いというまさにアレンジボールを想起させる演出もパチンコ中・上級者の琴線に触れる要素のひとつであろう。
さらに、意外に重要なのが盤面の下部に並べられたランプによって行われるラウンド抽選で、この垢抜けない野暮ったさが一周回って在りし日の新鮮さを感じさせたり、落ち着きや安らぎを与えたりしてくれるのである。
アタッカーが電チュー型というのも高ポイント。このようなさまざまな要因が時代と流行を飛び越えて古参パチンカーのハートに直撃するのである。この台はパチンコに浮遊する普遍性と衝動を閉じ込めた名機であり、トラディショナルスタンダードなのである。
(文=大森町男)