31日に東京競馬場で行われた日本ダービー(G1)は、圧倒的1番人気に支持されたコントレイル(牡3歳、栗東・矢作芳人厩舎)が3馬身差の勝利で無敗の二冠を達成。父ディープインパクト以来となる無敗三冠へ王手をかけた。
「2番手(コルテジア)の後ろに入れた、そこが大きかったですね――」
レース後、主戦の福永祐一騎手がそう語った通り、終わってみれば完璧な“エスコート”だった。
今年の日本ダービーは単勝1.4倍という数字が示す通り、無敗の皐月賞馬コントレイルが抜けた存在だった。この「1.4倍」は昨年のサートゥルナーリア(1.6倍)、2015年のドゥラメンテ(1.9倍)を超える近年では最も高い支持率。つまり、それだけ抜けた馬であり、同時に「マークされるべき存在」だったということでもある。
父ディープインパクトと同じ「3枠5番」からのスタートとなったコントレイルだが、ほぼ最後方から外を回っても勝てる父とは異なり、馬群の中で競馬する本馬にとっては決して簡単な枠ではなかったはずだ。競馬が必ずしも最も強い馬が勝つわけでない1つの理由は、ライバルたちが実力馬をマークし、楽なレースをさせないようにするから。
大本命馬が進路を失い惨敗することは、決して珍しい光景ではないのだ。
そんな中、コントレイルを擁する“ノースヒルズ軍団”は今年の日本ダービーに3頭の刺客を送り込んだ。大本命馬コントレイルに加え、きさらぎ賞(G3)を勝ったコルテジアと、京都新聞杯(G2)を勝ったディープボンドだ。
「競馬はあくまで全馬が全力で勝利を目指す公正確保が最重要なので、あまり大きな声では言えませんが、ノースヒルズ軍団にとっては完璧なレースだったのではないでしょうか。
内から好スタートを決めたコントレイルでしたが、すぐにコルテジアがその前に出て、ディープボンドが外からぴったりと併走。これがライバル陣営だったら、コントレイルとい福永騎手にとってプレッシャーになりますが、同じ勝負服(正確には若干異なる)がすぐ近くにいたことで安心感があったと思います」(競馬記者)
記者がそうレースを振り返った通り、スタートして1コーナーに飛び込むころには3頭が固まり、完璧なノースヒルズ軍団の布陣が出来上がっていた。
レースは1000m通過が61.7秒という、おあつらえ向きのスローペース。向正面でマイラプソディに騎乗した横山典弘騎手が一気にハナに立つ奇襲を仕掛けたが「ノリさん(横山典騎手)が動いてくるのでは、と思っていたので『やっぱり来たか』という感じ。そこは冷静に受け止められました」と鞍上の福永騎手は冷静に対処した。
「横山典騎手(マイラプソディ)がレースを動かしたことで、ややポジションが下がったコントレイルでしたが、和田竜二騎手(コルテジア)と松山弘平騎手(ディープボンド)がその前に入って、しっかりとガード。この時点で、福永騎手にとって大きな課題の1つだった『最後の直線での進路取り』の心配がほぼなくなりました」(同)
最後の直線ではコルテジアとディープボンドが先に仕掛けて馬群がバラけたところで、コントレイルが満を持してスパート。結果的に福永騎手が「抜け出すと遊んじゃう」と指摘した通り、外へ流れてしまったが、そこから末脚をいかんなく発揮しての圧勝劇。単勝1.4倍の大本命馬に、ここまでスムーズな競馬をされてしまっては、ライバル陣営はお手上げだっただろう。
この結果には、元JRA騎手の安藤勝己氏も公式Twitterを通じて「前半の位置取りが素晴らしかったし、ノースヒルズ勢が周りを固めたからね」とノースヒルズ軍団の“連係プレー”を称賛。コントレイルの勝因の1つに挙げている。
「ノースヒルズ軍団にとっては、2014年のワンアンドオンリー以来となる嬉しいダービー制覇。コントレイルという歴史的な名馬を輩出できたこともそうですが、何よりも3歳の頂点を決める日本ダービーに3頭も送り込めた充実ぶりが、最も大きな勝因だと思います」(別の記者)
実際に、ダービー前日の葵S(重賞)をビアンフェで勝利し、ダービー直前の京都メインレース・安土城S(L)もエントシャイデンが勝利と、絶好調といえる現在のノースヒルズ軍団。
2013年のキズナ、14年のワンアンドオンリーで連覇して以来、日本ダービーはずっと社台勢(ロージャーバローズはノーザンファーム育成馬)が優勝していたたけに、6年ぶりに再度“風穴”を開けた格好だ。
レース後、「(前田晋二)オーナーから『秋は国内に専念。三冠を狙いに行くぞ』と言われました」とコントレイルの今後の展望を明かした矢作芳人調教師。父ディープインパクト以来となる無敗三冠へ、いよいよ王手が掛かった。