新型コロナウイルスの余波はテレビ業界にも及んでいる。「密」になりやすいドラマの撮影は中止され、バラエティ番組は総集編や傑作選を放送中だ。「新撮」だったとしても、リモート出演やソーシャルディスタンスを保ってトークするなどの工夫でしのいでいる。
では、コロナ後も生き残るお笑い芸人と、逆に消えていく芸人の違いは何か。本題に入る前に、さまぁ~ずが、ある番組でリモート収録に臨んだ際の感想を振り返ってみよう(5月11日深夜放送『さまぁ~ず×さまぁ~ず』<テレビ朝日系>より)。
大竹一樹「言いたいことの1割言えるかどうかぐらい。(誰かが言うのを)全員待つ(時間が増える)。一瞬のツッコミみたいなことが、もう難しい」
三村マサカズ「パソコン内でお前(※大竹)がボケているのを発見してツッコもうとしても、『続いてはですね』と進行が進んでいる」
大竹「みんなが同じところを見れてないから」
今まで、タレントはスタジオという同じ空間にいたため、その場の空気を読んで臨機応変に話したり、瞬時にツッコミを入れたりするなど、いわば「団体芸」的なトークを展開することができていた。しかし、リモート出演では自分の目の前にパソコンの画面しかないため、場の空気が読みづらく、臨機応変な対応やアドリブを利かせづらくなっているというわけだ。
さんまもお手上げ?『御殿』休止の衝撃
こうした影響は、人気番組『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)にも影響を与えているという。
「4月21日の3時間スペシャル以来、『御殿』は放送を休み、過去の傑作選を流しています。ほかの番組がリモート収録にシフトしたり、たとえば『世界の果てまでイッテQ!』(同)は形を変えて国内ロケを始めるなど、なんとかオンエアの糸口を見つけている中、局を代表する長寿番組が約3週間も新たに収録できていないというのは、ショッキングですね」(テレビ局関係者)
明石家さんまは「トークを料理して笑いに変える」スペシャリストだが、そのための“具材”がないとお手上げということだろうか。『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)も、5月2日の放送では、さんまが1人で過去の名シーンを振り返る内容だった。
また、『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)も長らくスタジオ収録ができなくなっており、5月7日にダウンタウンの2人が36日ぶりに対面し、49日ぶりのスタジオ収録が行われた。5月14日の放送では、ソーシャルディスタンスを保った形でトークを繰り広げるようだが、今後はどうなるだろうか。
「スタジオ収録でのトークに定評がある今田耕司や東野幸治なども、今は仕事がなくなっているそうです。大勢のタレントをさばく『司会』という役割を担うことが多い彼らですが、今後はそのポジションが本当に必要なのかどうかも問われることになりそうです」(同)
「癒やされる」ぺこぱ・シュウペイの強み
今回の変化によって、芸人たちの活動にどのような影響があるのだろうか。
「これまで芸人の評価指標は、いかにトークを転がせられるかがポイントでした。しゃべりの下手なタレントを泳がせて一言で刺したり、たとえツッコミをして話に弾みをつけたり、とにかく細かいテクニックで笑わせてきたのです。しかし、若干の時差があるリモートが当たり前になってくると、そうした“間”を生かした芸は重要視されなくなってくるでしょう」(同)
では、今後はどんな芸人が生き残っていくのだろうか。
「もちろん、おもしろいに越したことはありませんが、これからはそれだけではない部分が重要になってくると思います。その人が持つ雰囲気やエネルギーに視聴者が癒やされたり勇気づけられたりする、そんな芸人が重宝されるのではないでしょうか。存在しているだけで明るくなるとか、見るだけで元気をもらえるとか、そういった価値基準にシフトしていくような気配があります。
たとえば、ぺこぱ・シュウペイ。昨年の『M-1グランプリ2019』(テレビ朝日系)で3位になったときは松陰寺太勇の『やさしいツッコミ』が話題になりましたが、今はシュウペイのなんだかわからない『天真爛漫さ』に癒される人も多いのです」(制作会社スタッフ)
確かに、いろいろな意味で視聴者が疲弊している中、「見ているだけ癒される」という要素は、これまで以上に大事になってくるのかもしれない。
有吉が爆笑した安村のリモート芸とは
「数多くのリモート収録で異彩を放ち、また『これが正解なのかもしれない』と思ったのが、4月22日に放送された『有吉の壁』(日本テレビ系)での、とにかく明るい安村のパフォーマンスです。番組が『壁芸人』と名付ける芸人たちが、自宅や事務所、楽屋からリモートで出演し、人気スターになりきって演じるという内容でした。そこで安村は原田龍二になりきり、『温泉ロケのシミュレーション』ということで自宅でパンイチになり、頭からお湯をかぶりだしたのです。当然、床は水浸し。これには、有吉も『自宅でしょ!?』と驚きつつも爆笑していました」(同)
これまで“数合わせ”のようにスタジオで座っていた芸人も、リモート出演によって一人ひとりが見せ場をつくることができるようになる。そうすれば、自ずと輝く芸人とそうでない芸人が色分けされることになり、熾烈な椅子取りゲームがさらに激化することになりそうだ。今後は、司会がわざわざ振らなくても、リモートでいろいろなことに1人で挑戦できる芸人が重宝される流れが生まれるかもしれない。
今、在宅時間が長くなっていることで、テレビの視聴率も2~3%ほど上積みされているという。これまで「YouTube」がテレビを脅かすゲリラ的存在として見られていたが、今やテレビ自体がひとつのYouTubeチャンネルのように意識されつつあるのかもしれない。そのおもしろさに気づき始めている人が増えている今、テレビ業界関係者には、さらなる創意工夫を望みたいところだ。
(文=編集部)