「賞金が高いから、ジャパンCを勝ちたい――」
今年9年目を迎えた原田和真騎手がルーキーの時、週刊『ブック』の「新人騎手紹介コーナー」で書いた目標である。「賞金が高いから」と前置きした理由は、自身の家が裕福でなかったために早く働きたかったことがジョッキーを目指すきっかけだったからだ。
しかし、騎手デビューしてからなかなか芽が出ず、ジャパンC(G1)どころか、平地ではG1に出ることさえ難しい状況にあった。
そんな原田騎手が昨年1頭の馬に出会えたことで、運命が大きく変わってきたのだ。
今週10日に東京で行なわれるNHKマイルC(G1)に出走予定のプリンスリターン(牡3、栗東・加用正厩舎)が、その馬だ。
原田騎手がこの馬に出会ったのは昨年。函館に遠征したものの騎乗馬集めに苦労し、それを見かねた同じ美浦の松岡正海騎手が手を差し伸べた。それがきっかけで栗東の加用厩舎の調教を手伝うようになる。
調教は主に2歳の若駒が中心で、その中にいたのがプリンスリターンだった。
「初めて調教した時から、プリンスリターンは良い馬だと感じていたようで、この馬の癖を直すことに取り組み、調教を工夫したり、ハミの交換、さらには歯を削ってみたりしたそうです」(競馬記者)
そんな原田騎手の取り組む姿勢を見て松岡騎手は、調教師とオーナーに進言。プリンスリターンのデビュー戦に原田騎手の騎乗が決まる。
「人気馬に騎乗するC.ルメール騎手との叩き合いを制し、5番人気ながら新馬勝ち。このことは、原田騎手にとってかなりのアピールになり、自信に繋がったと思います」(同)
続けて原田騎手は、函館2歳S(G3)で11番人気3着に持ってくる。
「その後も美浦所属の騎手ながら栗東に赴き、付きっきりでプリンスリターンの調教を行ないました。それがききょうS(OP)の快勝、初の平地G1出走に繋がったと思いますね」(同)
そして、朝日杯FS(G1)に出走。遂に原田騎手は念願の平地G1騎乗を果たす。結果も15番人気の5着。この馬はG1でもやれると手応えを感じただろう。
しかし、迎えた2020年は2戦するも連敗を喫することに……。
加用調教師は「(前走アーリントンCは)早めに抜け出してソラを使って3着。クビ差で負けたシンザン記念もそうだが、乗り方ひとつで何とかなったと思う」と、工夫次第で太刀打ち出来ると分析。「これまでの敗戦を今回につなげてほしい」と原田騎手に檄を飛ばす。
「加用調教師がおっしゃっている通り、2戦とも最後の直線で早めに先頭に立ったことで、ソラを使ってしまう悔しい結果でした。
原田騎手にとっては2戦とも自身にとって初の重賞制覇が懸かった1戦。当然、はやる気持ちもあったでしょうし、今回はそんな感情を抑えて、どこまで冷静に乗れるかが大きなカギになりそうです」(同)
だが、陣営にまったく臆するところはない。
プリンスリターンを担当する前田功士厩務員は、「(ここ2走)自分から動いて一番強い競馬しているのは間違いない。中間も原田君が付きっきりで攻め馬をつけてくれているし、人馬ともにタイトルを取らせてあげたいと思っている」(東スポWeb)と熱く語っている。
それぞれの力強い言葉に、厩舎が一体となって原田騎手とプリンスリターンをサポートしている雰囲気が感じられる。あとはこの想いに、原田騎手がどう結果で応えられるか。
出走18頭で、唯一デビュー戦からずっとコンビを組み続けているのが、原田騎手とプリンスリターンだ。これまで得てきた自信と反省を胸に堂々とG1に立ち向かっていけば、良い結果がもたらされるに違いない。