「めちゃくちゃ不利ですよ、これは……」
温厚なイメージのある競馬界のレジェンド武豊騎手が、珍しく不満をこぼしたのは自身が番組のホストを務める『武豊TV! II』(フジテレビ系)での一幕だ。
武豊騎手が騎乗したレースを、本人の解説付きで振り返る人気番組。詳細は番組を見て頂きたいが、テーマに挙がったのは今年2月に行われた白富士S(L)だった。
東京の芝2000mで行われるこのレースで、武豊騎乗のアイスストーム(牡5歳、栗東・吉村圭司厩舎)は、大外の8枠14番だった。天皇賞・秋(G1)が開催されることで有名な本コースで、外枠が不利なことは、熱心な競馬ファンなら周知の事実だろう。
その上で、百戦錬磨の武豊騎手があえて白富士Sの問題点を指摘したのは、毎年このレースが東京の「Dコース」で行われるからだ。
JRAの多くの競馬場はコース内側の仮柵を動かすことによって、芝コースのダメージを分散している。東京競馬場の場合、内からABCDと4つのコースが設けられているのだが、Dコースは最も外側のコースということになる。つまり同じ競馬場の、同じ距離のレースでも、使用コースによってトラックの形状が微妙に変化するということだ。
ちなみに東京のDコースは、最内のAコースより9mも外側を回るというから驚きだ。その影響もあって、普段18頭がフルゲートの東京だがDコース使用時には16頭となる。
「ただでさえ、東京の2000mは外が不利ですけど、Dコースになるとゲートの位置がかなり前になるので……コーナーでスタートするような感じですから」
実は毎年2月の東京開催では、このDコースが使用されている。該当する共同通信杯(G3)や東京新聞杯(G3)のフルゲートが16頭なのは、このためである。武豊騎手が話している通り、Dコースの芝2000mは1コーナーまでの距離がかなり近く、外枠が圧倒的に不利なコースとして有名だ。
「東京芝2000mはコーナー手前からのスタートとなるため、昔から関係者には『フェアじゃない』と不評でした。2003年にコースが改修されたことで、かなり改善されましたが、コーナーが大きいDコースの2000mは相変わらずなようで……。
武豊騎手が指摘している白富士Sのアイスストームは、前走が中日新聞杯(G3)で3着だったにも関わらず、格落ちのレースで前走よりさらに人気を落としていましたからね。Dコース2000mの外枠が、いかに不利なのかを物語っていると思います」(競馬記者)
実際に、武豊騎手も「言ってるんですけどね。Dコースの2000mはなるべくやめてほしいっていうのは」と長年、問題点を指摘しているようだ。
騎乗したアイスストームは以前から「好きな馬」と話しており、「重賞でも勝負になる」と高評価を与えている存在。それだけに、大外枠を引いてしまったことに肩を落としたという。結局、レースは最後の直線で不利を受けたことあって5着に終わっている。
「武豊騎手と東京芝2000mと言えば、1991年の天皇賞・秋が有名です。単勝1.9倍のメジロマックイーンは7枠13番という難しい枠からのスタート。発馬を決めて一気に内へ切れ込み、見事先頭でゴール板を駆け抜けたメジロマックイーンと武豊騎手でしたが、スタート直後の切れ込みが斜行と判断され最下位に降着となりました。
レース内容自体は、後続に6馬身差をつける圧巻の内容。レース後、武豊騎手自身も珍しく何度もガッツポーズをして、ゴーグルをスタンドに投げ入れるパフォーマンスまでやったんですが……」(別の記者)
GIの1位入線馬の降着処分は、日本競馬史上初。舞台が有名な天皇賞・秋だったこともあり、武豊騎手とメジロマックイーンの降着は、一般の新聞でも取り上げられるほど大きな騒動となった。
あれから29年。東京競馬場のコースが改修されたことで、問題点が緩和された芝2000mだがDコース使用時だけは、依然「過去」を彷彿とさせるような状況だ。“渦中の人”だった武豊騎手の記憶にも、苦い思い出として残っているのかもしれない。