今週はあのディープインパクトを記念し、弥生賞が「報知杯弥生賞ディープインパクト記念」として行われる。日本最強馬と呼ばれ、武豊騎手を背に数々の偉業を達成した同馬が、初めて重賞を制覇したのが2005年の第42回弥生賞だった。しかし過去に56回行われた弥生賞には、ディープインパクトにも勝るにも劣らない怪物級の名馬がズラリと揃っている。今回はそんな弥生賞を制した怪物達を紹介していこう。
もし弥生賞の優勝馬で印象に残る馬のアンケートを実施すれば、まず名前が挙がるのがこの2頭だろう。
・アグネスタキオン(2001年優勝)
兄は前年の日本ダービー馬アグネスフライトだが、同馬の方が評価が高く2年連続の日本ダービー兄弟制覇が期待されたほど。デビュー戦を快勝後、2戦目は暮れのラジオたんぱ杯2歳Sに出走。そこで翌年の日本ダービー馬ジャングルポケットや、NHKマイルCを快勝したクロフネを完封しレコード勝ち。年明け初戦の弥生賞はその年の菊花賞と有馬記念を制したマンハッタンカフェらに5馬身以上の差を付けて勝利。3戦3勝で迎えた皐月賞も単勝1.3倍の支持に応え、翌年の宝塚記念馬ダンツフレームなどに勝利、日本ダービーもほぼ確実視された。だが5月に入って屈腱炎を発症し引退、幻の日本ダービー馬、幻の三冠馬とも呼ばれた。圧倒的な勝ちっぷりと底知れぬ強さ、負かした相手のレベルから見ても相当な器だったことは誰もが認めるところだろう。
・フジキセキ(1995年優勝)
サンデーサイレンスの初年度産駒であり、幻の日本ダービー馬と呼ばれた馬。デビュー戦は2着に1.3秒の差を付け圧勝。2戦目のもみじSでは、翌年の日本ダービー馬タヤスツヨシを子ども扱いとし、レコードタイムで勝利。2連勝で迎えた朝日杯3歳S(G1)もスキーキャプテンを相手に勝利し、JRA最優秀2歳牡馬に選出。翌年は皐月賞を目指して弥生賞に出走し、ここも横綱相撲で快勝。皐月賞だけでなく日本ダービーも最有力と言われた。しかしレースから約2週間後に屈腱炎が判明、残念ながら引退となった。それまでのレース内容から最低でも二冠、そして菊花賞を加えた三冠も期待されていたほどの圧倒的な強さだった。
この2頭はともに無敗で弥生賞を制したが、日本ダービーに進めず引退となってしまった。もし無事であれば、ディープインパクトが霞むほどの実績を残していたかもしれない。
もちろんまだまだ「怪物」は残っている。中でもディープインパクトと同じ三冠馬となった2頭、そしてディープインパクト以上の社会現象を巻き起こした1頭を挙げずにはいられない。
・シンボリルドルフ(1984年優勝)
ディープインパクトよりも前に無敗でクラシック三冠を成し遂げた名馬。オールドファンからは「同馬が日本競馬史上最強」という声も少なくない。3戦3勝で挑んだ弥生賞を快勝し、その後は圧倒的な強さで菊花賞まで勝利。菊花賞から中1週で挑戦したジャパンカップは3着に敗退したものの、暮れの有馬記念と翌年の天皇賞(春)とジャパンカップを勝利、有馬記念2連覇を達成した。3歳時の有馬記念勝利はディープインパクトも成し遂げられなかったもの。しかもジャパンカップを走っての記録だけに、その価値は大きい。顕彰馬にも選出されている。
・ミスターシービー(1983年優勝)
シンボリルドルフの前年にクラシック三冠を達成した名馬。翌年には天皇賞(秋)も制している。もともとスタートに難がある馬で、後方からの競馬が定位置。しかしレースの途中からまくる競馬が持ち味で、道中最後方にいても3コーナーから4コーナーには先頭集団の後ろに追いつき、そのまま抜き去るという走りが大きなインパクトを与えた。シンボリルドルフやディープインパクトほどの安定感はなかったが、多くのファンに愛された馬でもあった。顕彰馬にも選出されている。
・ハイセイコー(1973年優勝)
シンボリルドルフとミスターシービーが1980年代を代表する名馬なら、1970年代を代表する名馬の一頭がこのハイセイコーだ。地方競馬の大井競馬場出身で、6戦6勝の実績を引っ提げて中央競馬(JRA)へ移籍。その初戦の弥生賞を快勝し、皐月賞も快勝。日本ダービーはまさかの敗退を喫するものの、翌年の宝塚記念を勝利した。その人気は絶大で、日本ダービー当日はハイセイコー目当てに競馬ファンが13万人も訪れ、テレビの視聴率は中継したフジテレビとNHKを合わせると30.4%に達している。また鞍上の増沢末夫が歌った「さらばハイセイコー」はオリコンチャートで最高4位を記録、レコードはなんと50万枚を売り上げたという。2曲目の「ハイセイコーよ元気かい」も14万枚を売り上げたのだから、今では信じられないほどの社会現象だったといえるだろう。同馬も顕彰馬に選出されている。
この3頭は実力だけでなく、その人気も怪物級、ディープインパクトに決して引けを取らない馬であった。
さらにディープインパクト、シンボリルドルフ、ミスターシービーの他にも、弥生賞を勝ち日本ダービーも制した馬が11頭もいる。
・マカヒキ
・ロジユニヴァース
・スペシャルウィーク
・ウイニングチケット
・サクラチヨノオー
・ラッキールーラ
・クライムカイザー
・ロングエース
・タニノムーティエ
・アサデンコウ
・キーストン
さらに日本馬で唯一ドバイワールドカップを制したヴィクトワールピサや、ジャパンカップ・宝塚記念・ドバイDFなどを勝ったアドマイヤムーンなど、多くの馬がこの弥生賞を勝ち、名馬への階段を駆け上っている。
今年はどんな馬がこのレースをステップに更なる高みに上がるのか。実績上位のワーケアか、それとも弥生賞を勝ったディープインパクト産駒のサトノフラッグや、ヴィクトワールピサ産駒のエンデュミオンか。さらに母の父にアグネスタキオンを持つオーロアドーネも気になる一頭だ。かつて父や祖父が勝利した弥生賞を勝てば、そのインパクトは絶大。ドラマチックなレースを期待したい。