「Getty Images」より
どれだけ預貯金しても、お金はまったく増えない――。これは、日本人のほぼすべてがわかっている事実です。では、「投資」をしようとしても、株、債券、投資信託、FX、仮想通貨などがありますが、お金が減るリスクを考えると、手を出せない人が大勢いるのも、また事実です。
そこで目をつけがちなのが、「外貨預金」です。日本円の預貯金より金利が高いという理由よりも、預金という言葉が付いているので一種の安心感があるのかもしれません。しかし、外貨預金は、言うなれば「手数料の高い預金」です。
外貨預金がNGな理由1:高い手数料がかかる
外貨預金は手数料が非常に高いので、コストパフォーマンスが悪いことがNGな理由のひとつです。預金でかかる手数料といえば、ATM(現金自動預け払い機)での入出金時や、他支店・他銀行への振込手数料などが身近でしょう。しかし、外貨預金の場合、「日本円を外貨に替えるとき」と「外貨を日本円に替えるとき」の両方で手数料がかかります。
たとえば、日本円とドルを替える場合、大手銀行では1ドルにつき約0.5円(片道、以下同)かかります。仮に1万ドルの外貨預金を行った場合、円からドルにして、さらにドルから円に戻すと、手数料は合計1万円かかります。つまり、少なくとも両替の前後で為替が1円以上動かないと利益が出ないことになります。
どうしても外貨預金を行う場合は、ネット銀行で行うことをお勧めします。たとえば、住信SBIネット銀行では、日本円とドルを替える場合、手数料は1ドルにつき0.04円です。楽天銀行では、1ドルにつき0.25円です(2018年11月19日時点)。
他方、FX(外国為替証拠金取引)の場合、日本円とドルを替えるのに「往復0.3銭」としている会社が多く、1万ドルの取引なら手数料は30円です。FXと聞くと、「リスクが大きく怖い」という印象があるかもしれませんが、それはレバレッジを高くしたときの話です。
レバレッジとは、日本語で「てこ」のこと。証拠金(元手)より多くの金額の投資が行える仕組みを「レバレッジ」と呼ぶわけです。
仮に、10万円持っているとしましょう。外貨預金の場合、外貨に交換することができる金額は当然ながら10万円分までです。しかし、FXの場合は10万円分を証拠金として口座に入れることで、最大25倍の250万円分の外貨取引を行うことができるのです。ちなみに、証拠金を超える取引金額については、証券会社がお金を貸してくれている状態になります。
FXでレバレッジをかけずに、外貨預金と同じ金額の取引(レバレッジ1倍)で行えば、リスクが大きくなりすぎることはないのです。
外貨預金がNGな理由2:円高に動くと損失が続く
外貨預金の弱点は、円高です。外貨預金の場合、FXと異なり日本円を米ドルやユーロなどの外貨に替えて預金することしかできません。外貨預金を始めた当初よりも円安に動けば利益を得られますが、円高が続いた場合は損失の状態が続きます。つまり、円高に動いた場合は、外貨預金では利益を狙うことが難しいのです。
単純な話ですが、「1ドル=100円」の時に100万円をドル換算すると、1万ドルです。それが「1ドル=120円」と円安になれば円換算で120万円になり、「1ドル=80円」と円高になれば80万円です。
この点、FXであれば、証拠金を預ければ、実際にその通貨を保有していなくても、米ドルやユーロなどの外貨を売る取引もできるため、円安だけでなく円高になっても利益を狙うことができます。
外貨預金がNGな理由3:銀行破綻時に元本の保証がない
「預金」と記載があるので、いかにも安全そうに見えますが、外貨預金は円預金と異なり「預金者保護制度」の対象外です。円預金の場合、預金者保護制度によって1人当たり、1金融機関につき元本1000万円とその利息が保護されますが、外貨預金は保護されません。
外貨に投資はしたいけれど、どうしても安全資産がいいと考えるのであれば、米国債に投資をするのはいかがでしょうか。債券とは、お金を借りたときに発行する「借用証書」のようなものです。預貯金にお金を回すと利息がもらえるのと同じで、債券を購入することでも利息がもらえます。債券を購入した金額を「元本」と呼びますが、定期預金と同様、満期が来れば元本が返済されます。
日本国債は日本国が発行している債券であり、米国債は米国が発行している債券です。安全性を見るのに、「信用格付」があります。これは、債務の支払い能力を評価したもので、お金をきちんと返せる能力があるのかをアルファベットの記号で表します。AAA(Aaa)が最上位格付で信用力が高く、BBB(Baa)格以上は投資適格、BBB(Baa)格未満は非投資適格とされます。
ムーディーズやS&Pなどの格付機関が独自に、企業の業績や経営に関するデータを調査して債券の信用度を評価していますが、日本国債はムーディーズがA1、S&PがA+、一方の米国債はムーディーズがAaa、S&PがAA+となっており、米国債のほうが高い格付になっています。また国債と預金を比べた場合も、国と銀行、どちらが先に破綻するかは言わずもがなでしょう。
たとえば、SBI証券が取り扱っている米国債の内「トレジャリーストリップス米ドル建 2045/2/15満期 ゼロクーポン債」は、税引き前年利回りで3.204%あります。気になる手数料は片道0.5銭です。1万ドル購入しても片道50円という安さです。(2018年11月19日時点)
安全性と手数料を重視するならば、米国債もひとつの選択肢です。
金融商品の仕組み・特徴を知れば、自ずと投資すべきものがわかる
金融商品には、完璧なものはありません。また、リスクとリターンは表裏一体の関係なので、リスクを取らなければリターンは得られません。金融商品の仕組み・特徴をよく理解し、その上で自分が取れるリスク許容度に合わせて資産を組み合わせて活用すべきでしょう。
(文=頼藤太希/マネーコンサルタント、株式会社Money&You代表取締役)
頼藤太希
マネーコンサルタント/株式会社Money&You代表取締役
慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に株式会社Money&Youを創業し、現職へ。お金の総合相談サイト「FP Café」や女性向けマネーメディア「Mocha」を運営。メディアなどで投資に関するコラム執筆、書籍の監修、講演など日本人のマネーリテラシー向上に努めている。著書は『投資信託 勝ちたいならこの7本!』(河出書房新社)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。日本証券アナリスト協会検定会員。
